国際学力調査PISAは何のため? どう活用する!?

昨年末、代表的な国際学力調査であるTIMSS(国際教育到達度評価学会=IEA=の「国際数学・理科教育動向調査」)とPISA(経済協力開発機構=OECD=の「生徒の学習到達度調査」)の結果が、相次いで発表されました。とりわけPISAでは、日本の読解力が「低下」したことから、文部科学省は、今後作成する次期学習指導要領に向けた指導資料の中で、今から読解力の向上を各学校現場に求めることにしています。ところでPISAとはどういうもので、何のために行われているかは案外、知られていません。NPO法人教育テスト研究センター(CRET)とベネッセホールディングスの共催で先頃行われた国際シンポジウムから、PISAとは何かを見ていきましょう。

実施方法の変更で単純比較ができず

PISAは2000(平成12)年に始まって以降、3年ごとに実施されています。毎回出されるのは読解力・数学的リテラシー(活用能力)・科学的リテラシーの3分野ですが(他にオプション分野も出題)、「国語」「数学」「理科」などと教科名で呼んでいないところがミソです。学校で習った知識を問うTIMSSと違って、習った知識が社会に出てからも使える力になっているかどうかを問おうとしているからです。

今回(2015<平成27>年実施)は、全分野で紙による調査(PBT)からコンピューター使用型調査(CBT)に移行したのが最大の特徴で(一部の国・地域はPBTで実施)、文科省も、読解力が低下した一因として、CBTに対する戸惑いがあったことを挙げています。

シンポでは、林寛平・信州大学大学院助教が、CBTの導入に加え、得点化の方法が変更されたことなどの影響で、過去の得点との比較可能性が若干損なわれたことを指摘しました。韓国でも読解力が前回より19ポイント低下しましたが、影響を除去する複雑な計算をすると、実際には9ポイントほどの差だったといいます。しかも、もともとPISAの読解力は「他の分野に比べて振れ幅が大きい」というのが、林助教の見方です。

教育政策にどう生かすかが第一

林助教が「PISAのデータ単独では読解力低下の要因を説明できない」として、他の調査などと組み合わせた分析が必要だと指摘すると、ドイツでPISAに携わったハイデルベルク大学のヨアヒム・フンケ教授も「PISAに依存すべきではない時は、別の方法も取るべきだ」と応じていました。

そもそも今回のPISAでCBT方式に移行したのも、これからはデジタル機器から情報を得て仕事などをするのが当たり前の時代になる……という認識があったからでした。ただし、コンピューター自体は1980年代からある技術です。フンケ教授は、子どもたちが社会に出るころにはコンピューターに代わる技術が開発されている可能性さえあることも指摘しながら、「PISAのような大規模調査(の改善)を待ってはいられない。自分の国にとって何が必要か、独自の取り組みをすることが大事だ」と話していました。

日本人はどうしても「テスト」というと、点数や順位の上下ばかり気にしてしまいます。しかしPISAは、あくまで各国の教育政策に生かしてもらうための「調査」(アセスメント)です。決して学力コンクールではないことは、全国学力・学習状況調査と同じです。PISAの結果をどう解釈するか、「読解」力が求められているのは、私たち大人のほうかもしれません。

※PISA(国立教育政策研究所ホームページ)
http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/index.html

※CRET/Benesseシンポジウム2016「これからの日本の教育のあり方~ポスト2030を見据えて~」
https://www.cret.or.jp/event/60/

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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