記述式入試の導入、読解力低下…どう対応すればよい?

大学入試センター試験が終わり、いよいよ本格的な個別大学の入試シーズンです。今後の入試改革をめぐっては、2020(平成32)年度から導入される「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」で記述式問題の導入が検討されている他、国立大学協会(国大協)も、理系も含めた全国立大学受験生に個別入試で「高度な記述式試験」を課す方針を打ち出しています。そうしたなか、12月に発表されたPISA(経済協力開発機構<OECD>の「生徒の学習到達度調査」)の結果では、日本の子どもの読解力に課題があることがわかりました。

大学だけでなく社会でも必要とされる力に

これほど入試で記述式問題がクローズアップされているのは、これから大学に入ろうとする人には「複数の情報を統合し構造化して新しい考えをまとめる思考・判断の能力や、その過程を表現する能力」(2016<平成28>年3月の文部科学省「高大接続システム改革会議」最終報告)が、ますます必要とされるからです。

大学生のレポートや卒業論文などを書く力が落ちてきているということは、かねて指摘されていました。一方で、自ら主体的に課題に取り組み、自分の頭で考え、先生や友達と議論しながら自分なりの解決策をまとめ、文章やプレゼンテーションで発表していく力は、大学教育だけでなく、卒業後の職業生活や社会生活にも不可欠です。社会がどう変化していくかわからない時代には、そんな能力を持った人を、大学でこそ養成することが求められます。高校でも、そんな大学生活を意識して、日頃の授業を通じて、思考力・判断力・表現力を身に付けることを意識する必要があります。

そこで心配になるのが、PISAで指摘された読解力の低下です。文科省では、その背景として、高校生の読書量が減っていることや、新聞を読む小中学生の減少とともに、スマートフォン(スマホ)を通じたインターネットの利用時間が増加することで、一定量の論理的な文章に接する機会が教科書ぐらいしかなくなっていることを指摘します。その教科書すらきちんと読めていない中高生が少なくないことが、国立情報学研究所の調査でも浮き彫りとなっています。

さらに文科省は、小学校に入学する前の段階から知っている言葉に差がついていて、それが入学後の学力差につながっているとして、低学年からの「語彙(ごい)力」を強化していきたい考えです。
家庭でも、幼少時に絵本の読み聞かせをすることから始め、次第に本に親しませながら、言葉や文章に対する親しみを持たせることが重要でしょう。目に入るところに新聞がなければ、手に取って読もうとは、なかなか思えません。地域の公共図書館は大きな味方となってくれるはずですし、入学後には学校図書館があります。

学校の授業では、PISAの結果を受けて、全教科などで「言語活動」を充実することになるでしょうし、次期学習指導要領では、これを「アクティブ・ラーニング」(主体的・対話的で深い学び、AL)へとパワーアップさせたい考えです。こうした学習に一生懸命取り組むことが、ひいては記述式入試への対応にもつながることでしょう。

※高大接続システム改革会議 最終報告
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/06/02/1369232_01_2.pdf

※読解力の向上に向けた対応策について
http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2015/05_counter.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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