いじめを生まない学校・学区づくりを

いじめ防止対策推進法の施行から3年が過ぎたにもかかわらず、「重大事態」が見過ごされたり、自殺事件が各地で相次いだりするなど、悲しい事案を防ぐことができていません。どうすればよいのでしょうか。国立教育政策研究所が昨年12月に開催した「いじめ問題国際シンポジウム」をきっかけに、日本のいじめの特質や、効果的な対応策を探ってみましょう。

「社会問題化」の一方で発生件数は変わらず

いじめをめぐっては、1986(昭和61)年冬・1994(平成6)年秋・2006(同18)年秋・12(同24)年夏と、象徴的な事件がマスコミで大きく取り上げられるなどして、4次にわたる「社会問題化」がありました。そのつど対策が強化されてきており、第4次社会問題化を受けて、教育再生実行会議の提言に基づき、いじめ防止法が成立したのは、記憶に新しいところです。

注意したいのは、社会問題化したからといって、いじめの「発生」件数が増えたわけではないということです。文部科学省が毎年行っている調査は、あくまで学校が把握した「認知件数」であって、認知件数が増えるということは、それだけ解消への取り組みが行われる可能性も高くなるということを意味します。ただ、積極的な認知が奨励され、重大事態への対処が学校に義務付けられても、それが見過ごされたり、教員までもがいじめを助長してしまったりする事案も起こっています。

同研究所は、過去18年間にわたって、ある市を対象とした追跡調査を行ってきましたが、児童生徒の回答によると、被害経験率は、急増も急減もしていませんでした。
発生したいじめを早期に発見し、エスカレートする前に対処することは、もちろん不可欠です。しかし「いじめ防止対策」は、それだけで済むものではなさそうです。

「規律・学力・自己有用感」の改善で未然防止

いじめに関する国際シンポは、1996(平成8)年と2006(同18)年にも行われており、10年に一度行われている格好です。過去2回の中では、▽いじめは多くの国が共通に抱える問題だが、その実態には差がある(第1回)▽日本は他国に比べて「暴力を伴わないいじめ」が多い(第2回)……ということが明らかになりました。

そこで今回は、日本と同様に治安のよい(暴力犯罪の少ない)国であるスウェーデンとの協働比較調査を実施しました。その結果、ひどくぶつかる・たたく・蹴るといった「激しい暴力を伴ういじめ」は両国とも一部の特別な子どもが何度も繰り返していましたが、幅広い子どもが参加するのは、スウェーデンでは「軽い暴力を伴ういじめ」、日本では仲間外れ・無視・陰口といった「暴力を伴わないいじめ」であるという違いが明らかになりました。やはり暴力を伴わないいじめは、日本社会の特質ということができそうです。

同研究所では、全国18の中学校区で、いじめの未然防止に取り組んでもらいました。このうち2町村の中学校区では、いじめに特化せず、小中学校が連携して「規律・学力・自己有用感」の改善に取り組んだところ、翌年には、いじめも減ったといいます。

学区ぐるみで計画的に「いじめが起きにくい学校づくり」に取り組むことで、いじめの未然防止につなげる。それこそが、いじめ防止法で各学校に策定を求める「学校いじめ防止基本方針」を実効性あるものにする確実な道だ……ということがいえるでしょう。

※国立教育政策研究所  教育改革国際シンポジウム「いじめを生まない学校づくり-第3回いじめ問題国際シンポジウム-」
http://www.nier.go.jp/03_laboratory/pdf/20161025.pdf

※国立教育政策研究所 生徒指導支援資料6「いじめに取り組む」
http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/2806sien/index.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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