大学の「教育力」に世界的な注目 ランキング日本版
国際的に最も評価が高い「世界大学ランキング」を毎年発表している英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」(THE)は来年3月、「教育力」に焦点を当てた日本版ランキングを発表することにしています。同様のランキングは、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)をパートナーとした米国版を、今年9月に発表済みです。なぜ、大学の教育力に注目が集まっているのでしょうか。
従来は「研究」中心
THEの世界大学ランキングをめぐっては、2016(平成28)年版で、東京大学が43位から39位に順位を上げたものの、アジアの中では3位から4位に落ちたことが話題になりました。
ただ、世界ランキングの評価割合は「研究力」「研究の影響力」が計60%、「教育力」が30%を占めていて、いわゆる「研究大学」でなければ、評価対象としてエントリーすることさえできません。そのうえで、ランクが付くのは980大学までで(前年までは800大学)、全世界に1万8,000校あるといわれるランキング対象の大学の5%ほどにすぎません(THEランキングへの総エントリー数は非公表)。
一方、世界でしのぎを削る研究までには取り組まなくても、高等教育人材の輩出を目的とした教育中心の良質な大学は、多数存在します。典型的なのが、米国のコミュニティー・カレッジと呼ばれる大学です。しかし、従来のランキングでは、そうした教育中心の大学は、評価すらされません。日本でも、私立大学や、国公立でも教員養成や人文系の単科大学など、教育中心の大学が、数から言えば圧倒的です。
THEでは、世界ランキング以外にも、地域別(アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、BRICS・新興国など)、評判ランキングなど、多様なランキングを発表しています。そうしたなかで今回、米国に続いて、日本でも、教育力に焦点を当てたランキングを作成することになったのです。
「高大接続」時代の志望校選びにも
10月に来日したTHEのフィル・ベイティ編集長は、「大学にとって、教育は、研究と並ぶ中核的な役割であり、民主主義を広げ、社会に参画する市民を育てることで、国や世界に貢献する目的があります。
将来、単純労働がロボットに代替される中では、(機械にはできない)問題解決能力や創造力、情報を使って調査をしていく能力が欠かせません」と説明しました。研究力に比べれば、教育力の測定は難しいものの、データサイエンスへの投資を強化してきたことに加え、日本国内で豊富なデータを持つベネッセと協力することで、評価が可能になるといいます。
THEランキングの日本版は、留学生だけでなく、国内においても、偏差値だけに頼らない、有力な志望校選びの手段となることでしょう。
※THE世界大学ランキング(英文)
https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings
(筆者:渡辺敦司)