いずれタブレットが「文房具」に!? …でも道は遠く

社会の情報化は、ますます進行しています。学校教育でも、情報化社会に生きていく資質・能力を子どもたちに育成することが急務であり、次期学習指導要領の下で求められるアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)型の授業にも、ICT(情報通信技術)機器の活用が有効だとされています。文部科学省には、いずれICT機器を<文房具>並みの扱いにしたいという考えもあるのですが、その道のりは、かなり遠そうです。

家庭の負担にして持ち帰りも可能に

すべての児童生徒が、独占して使える教育用コンピューターを持つことになった場合には、「学用品等」と同等の位置付けにして、費用は各家庭の負担とする……。こんな提言が今年7月、文科省の有識者懇談会の最終まとめに盛り込まれました。直後に策定された同省のプランでも、2017(平成29)年度内に検討して、結論を得るとしています。

現在、学校の教育用コンピューターは、実験器具や体育器具と同じ「教具」だと考えられています。児童生徒一人ひとりが持つ必要はないけれども、授業には欠かせないものであり、学校側が費用を負担して用意するのは当然だ……というわけです。

国は、第2期教育振興基本計画(2013~17<平成25~29>年度)で掲げた整備目標に基づき、14~17(平成26~29)年度の4年間で総額6,712億円を交付税措置する4か年計画を進行中です。どの公立学校にも、コンピューター教室に40台、普通教室に各1台、特別教室に6台、場所を限定しない可動式40台などの教育用コンピューター整備を目指しており、これによって教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は、3.6人となる見込みです。

ただ、これは、あらかじめ授業でコンピューターを使う日を決めておき、事前に用意しておくことが前提です。思い立った時に使えるものではありません。

一方、AL型の授業では、自分で調べ、資料をもとに話し合い、考えたことをまとめて発表したりする学習活動が、少なくとも単元ごとに求められます。クラスの人数分とは言わないまでも、グループ分ぐらいは常備しておくことが理想です。また、デジタル教科書・教材が普及してくれば、タブレットなどの携帯端末を家に持ち帰って復習・予習したいという意向も当然、出てくることが予想されます。

一人一台を独占的に使うのが当たり前の時代になれば、コンピューターも、文房具などと同じ「学用品等」として扱うのが適当だ……というわけです。

自治体の35%が未達成

もっとも、幸か不幸か、そんな心配を今すぐする必要はなさそうです。文科省の調査によると、2015(平成27)年度末の段階で、公立学校の教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は6.2人にとどまっています。あと2年間で目標を達成するのは、非常に厳しい状況です。

自治体間の格差も深刻です。3.6人以下を達成した自治体(複数自治体で学校を設置する事務組合も含む、以下同じ)が30.5%ある一方、平均の6.2人を超えている自治体も34.5%あります。都道府県内はおろか、隣同士の自治体で整備状況に天と地の差があるという事態も、各地で起こっています。

文科省も8月に出した通知の中で、「新たな教育格差をも生みかねない」と危機感を示しているほどです。まずは整備の遅れた自治体で、一刻も早く予算化を急ぐことが求められます。

※「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」最終まとめ
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/07/__icsFiles/afieldfile/2016/07/29/1375100_01_1_1.pdf

※教育の情報化加速化プラン
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/07/__icsFiles/afieldfile/2016/07/29/1375100_02_1.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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