迫る採用「狭き門」…次期指導要領を担う先生、どう育てる?

保護者の方々にとって、お子さまの通う学校には「よい先生」がそろっていてほしいと思うのは、当然の願いでしょう。まずは大学の教員養成課程で、教員志望の学生をしっかり育ててもらい、教育委員会や学校には、よい人材を採用してほしいものです。こうした教員の「質」を考えるうえで、実は無視できないことがあります。教員志望者や採用枠の「量」の問題です。

2020年ごろを境に「教員需要」は急減

文部科学省は先頃、国立教員養成大学・学部などの在り方を検討する有識者会議を発足させました。その中で、委員の山崎博敏・広島大学大学院教授が、全国の公立小中学校の教員需要について、推計を報告しました。それによると、小学校の需要(毎年の採用枠)は、2018(平成30)年ごろの1万6,000人をピークに、21(同33)年ごろから急減し、25(同37)年には1万500人程度と、3分の2に縮小します。中学校も、2020(平成32)年ごろの9,000人をピークに、25(同37)年ごろには7,100人程度に減るといいます。

山崎教授によると、現在(2004~22<平成16~34>年ごろ)は、戦後3番目の「需要旺盛期」なのだそうです。学校では、第2次ベビーブーム(1970年代前半生まれ)に対応して大量に採用された50代の先生が一斉に退職期を迎え、その分を若い先生で補充する必要があるからです。しかし、それも次期学習指導要領が順次、全面実施に入る2020(平成32)年ごろまでの話だ……というわけです。

厳しい現場にしり込み? 教職志望をやめる学生も

文科省のまとめによると、2015(平成27)年度の公立学校教員の採用試験(今春採用分)で、受験者は前年度に比べ1.6%減ったのに、採用者は逆に3.2%増え、採用倍率は0.3ポイント減の5.4倍となりました。ただし地域や学校種の差も大きく、たとえば東京都では、小学校全科が3.3倍、中高共通が平均7.0倍などとなっています。

採用担当者の間では、倍率が3倍を切ると志願者の「質」も落ちるというのが経験則です。採用枠を満たすには、少々もの足りない人にも合格を出さざるを得ないといいます。

次期指導要領では、アクティブ・ラーニング(AL)の視点で「主体的・対話的で深い学び」を実現するという、授業の大幅なステップアップが求められます。そんな折、採用枠が狭まるのは、少なくとも採用者側にとって悪いことではなさそうです。

ただ、事態はそう簡単ではありません。大学側では、学生時代から学校の実態を知ってもらうため、現場での実習やボランティア機会を増やすなど、教員養成の強化に努めてきました。しかし、先の有識者会議で出た意見によると、それが逆に「先生になるのは厳しそう」という思いを抱かせ、優秀な学生が、かえって教員志望をやめることも少なくないというのです。さらに採用が難しくなるとすれば、ますます教職が避けられるかもしれません。

このように、先生の質を高めるのも、なかなか一筋縄ではいきません。学校側には、先生個人ではなく組織的な対応で、教育の総合力を高めてもらうとともに、保護者や地域の側も協力して、若い先生を育てていくことも求められるでしょう。

  • ※今後の小中学校教員の需要の動向について
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/077/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2016/09/21/1377405_1_3.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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