「高大接続」時代の大学入試、何が評価される?
文部科学省が8月末、大学入試センター試験に替わって2020(平成32)年度から創設される「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の実施方法をはじめとした、「高大接続改革」の検討の進み具合を明らかにしました。これからの大学入試では、いったい、どんな力が評価されるのでしょうか。
問われるのは幅広い「学力の3要素」
大学入試改革というと、つい、何を出題科目として課すのかとか、出願形態は一般入試なのか推薦・AOなのかといった、表面的なことにとらわれがちです。
しかし、高大接続改革は、入試だけでなく、高校と大学の教育も一体で見直そうというものであり、入試改革においては、覚えた知識をペーパーテストで再現する<狭い学力>だけでなく、思考力・判断力・表現力、さらには、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」(主体性・多様性・協働性)も含めた、幅広い学力が求められます。
そのため、知識・技能中心の「高等学校基礎学力テスト(仮称)」、知識・技能を使った思考力・判断力・表現力を中心にする「学力評価テスト」、主体性・多様性・協働性も含めた「個別大学における入学者選抜改革」という3段構えで、これら「学力の3要素」をバランスよく評価して入学者を選抜し、そうした力を入学後さらに伸ばして、社会で活躍できる力にまで引き上げよう……というのが、高大接続改革の眼目です。
学力評価テストで、大学側に採点の負担をかけてまで記述式問題を導入しようと検討しているのも、英語で民間の資格・検定試験に委ねてまで「聞く」「読む」だけでなく「話す」「書く」も含めた4技能を課すのも、すべて、そうした幅広い学力を問うためなのです。
大学側の「求める学生像」に注目
では、具体的にどのような評価がなされるのでしょうか。
先頃開かれた大学入試センターのシンポジウムで、西岡加名恵・京都大学大学院准教授は、英語を例に説明していました。たとえば、「They made me feel ( ) home.」という文章に穴埋めをさせる選択解答式なら、<at home>という成句を覚えているかどうかしか問えません。これを「私がその部屋へ入った時には、先生は既に授業を始めていた」の英訳問題にすれば、文法事項を使いこなす力まで必要となります。さらに、「高校を訪れている外国からのお客さんに、日本のことや暮らしを紹介することになりました。英語で、あなた自身の経験や感じたことなどを書いて、できるだけ具体的になるようにしてください」となると、幅広い学力である知識やスキルを総動員しなくてはなりません。これが「パフォーマンス評価」と呼ばれるもので、学力観の転換が求められると西岡准教授は指摘します。
東京大学の推薦入試と並んで、大きく注目されている京大の「特色入試」でも、教育学部では、第1次選抜で生徒が作成・提出する「学びの報告書」「学びの設計書」や、第2次選抜での課題と口頭試問で、パフォーマンス評価を重視しているといいます(第3次選抜はセンター試験の一定成績)。
大学が求める学生像に沿って、幅広い学力を問う入試は、既にさまざまな大学で取り組まれています。その大学が、学生にどんな資質・能力を求めているかということに注目しなければ、今後は入試「対策」のしようもなくなるのです。
※文部科学省「高大接続改革の進捗状況について」
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/08/1376777.htm
※大学入試センター シンポジウム「高大接続改革における学力評価の最新動向」
http://wuke.jp/cen-dnc/index.html
(筆者:渡辺敦司)