算数・数学に「統計教育」……なぜ?

次期学習指導要領(2020<平成32>年度から順次、全面実施)をめぐっては、小学校での英語の教科化や「プログラミング教育」の導入などが注目されています。その陰に隠れ、あまり注目されていませんが、実は算数・数学で、けっこう重要になりそうな学習内容の追加があります。いわゆる「統計教育」です。

「B問題」的な学習を重視

今回の指導要領の改訂では、小中高校のそれぞれで各教科の学習内容をバラバラに学ぶのではなく、教科間に「横串」を、学校段階間に「縦串」を差し、学校教育全体で一貫した「資質・能力」(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の三つの柱で構成)を育成して、大学など上級学校や社会につなげていこう……というのが眼目です。

しかし、全体としては、各教科の学習内容に、それほど大きな見直しはありません。資質・能力の育成のためには、既存の学習内容を大いに活用して、「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング=AL)を行ってもらうことが先決だ……という考えからです。ただし、「深い学び」には「見方・考え方」を明確にしておくことが重要だとして、各教科でも位置付けを図っています。

中央教育審議会の「審議のまとめ(案)」によると、算数・数学では、▽数学的な見方=事象を数量や図形及びそれらの関係についての概念等に着目してその特徴や本質を捉えること▽数学的な考え方=目的に応じて数・式、図、表、グラフ等を活用し、論理的に考え、問題解決の過程を振り返るなどして既習の知識・技能等を関連付けながら統合的・発展的に考えること……だというのですが、何だか専門的で難しそうです。

思い切り単純化すれば、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のA問題(主に知識)だけでなく、B問題(主に活用)で問われるような資質・能力を伸ばしていこう、というものだと言ってよいでしょう。

そこでクローズアップされるのが、「統計教育」です。

仕事や社会生活では当たり前

考えてみれば、世の中には、さまざまな統計データがあふれています。仕事においても、マニュアルに頼らず、データを読み取り、その後の展開を自分たちなりに考え、実践していくことが当たり前になっています。

だから審議まとめでは、「統計的な内容等の改善」として、「社会生活などの様々な場面において、必要なデータを収集して分析し、その傾向を踏まえて課題を解決したり意思決定をしたりすること」とされているのです。

算数・数学を学ぶのは、単に数学という学問体系のミニチュア版を学ぶのが目的ではなく、そこで学んだ資質・能力を、社会に出てからも「生きて働く力」にするためです。算数・数学というと、どうしても正解が一つしかない答えを出す教科だ……と思われがちですが、実は、必要な情報を取り出し、解釈し、正解が一つとは限らない答えを自分なりに出す……というプロセスも、これからの算数・数学教育では、いっそう重要視されてくるのです。

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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