実はあいまいな「部活動」の位置付け

もうすぐ夏休み。家族旅行の予定を立てようとしても、お子さんは部活動の日程が詰まっていて、なかなか時間が取れないかもしれません。部活動は、先生方にも長時間労働を強いる一因になっています。文部科学省のタスクフォース(特別作業班、TF)も先頃、しっかり休養日を設けるなどの適正化を提言しました。しかし部活動をめぐっては、そもそも非常に悩ましい問題があります。その位置付けが、あいまいなことです。

生徒の自主的・自発的活動が原則なのに…

部活動は、教科の授業や学校行事などと同じものだろう……と思っているかたは少なくないでしょう。しかし学習指導要領には、学校で部活動を行いなさいとは一言も書かれていません。あくまでも「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」ものとされており、正規の教育課程との関連を図るという規定が入ったのも、現行の指導要領(2008~09<平成20〜21>年改訂)からです。

生徒の自主的・自発的な活動である以上、顧問の先生も、生徒の要請に応じて、自主的・自発的に受けるもののはずです。しかし実態は、開設する運動部や文化部を学校が設定し、顧問も割り振って、生徒を募集するのが一般的になっています。実質的な強制加入としている学校さえ少なくありません。

日本の中学校教員は「世界一忙しい」ことが経済協力開発機構(OECD)の調査でわかっていますが、授業に充てている時間は平均程度で、事務作業の他、部活動指導が長時間労働に拍車を掛けています。放課後も翌日の授業準備の時間が十分取れないばかりか、土日も休めません。また、学校が小規模化すると、1校当たりの先生の数も少なくなり、そのため経験したことのない競技の顧問を引き受けざるを得ない……といった実態もあります。

休養日を定めることは不可欠

一方、部活動が、生徒に多様な活動の機会を提供してきたばかりでなく、学校教育の一環として「学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養(かんよう)等」(指導要領)に役立ってきたことも否定できません。文科省は、教員が教科指導や生徒指導だけでなく、部活動指導も行うという「日本型学校教育」(TF報告書)が国際的にも高く評価されているとして、次期指導要領では、教科等での学びとの結び付きをいっそう明確化したい考えです。思考力・判断力・表現力や主体性などを発揮する場として、部活動に期待をかけているからです。

ただし、「適切な休養を伴わない行き過ぎた活動は、教員、生徒ともに、様々な無理や弊害を生む」として、今後、実態調査に基づき、ガイドラインを策定するとしています。1997(平成9)年にも(当時は文部省)、学期中は中学校で週2日以上、高校で週1日以上の休養日を設定するよう提言したことがあります。競技力の向上には適切な休養も不可欠であることは、スポーツ科学の教えるところです。
また、「チーム学校」の一環として部活動指導員(仮称)を制度化し、教員の代わりに指導や引率ができるようにしたい考えです。

部活動は自主的・自発的な活動なのですから、こうした国レベルの検討とは別に、各学校でも、先生と保護者、そして生徒が本音で話し合い、今後の在り方を考える必要があるでしょう。

  • ※文科省「学校現場における業務の適正化に向けて」
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/uneishien/detail/1372315.htm
  • ※中学校指導要領 総則
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu/sou.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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