幼児期に育む「10の力」が小学校以降の基礎に

学校の授業や教科書のもとになる「学習指導要領」を、2020年代から全面改訂する中央教育審議会での検討が、夏の「審議まとめ」に向けて大詰めを迎えています。幼稚園の場合は「指導要領」ではなく「教育要領」と呼んでいます。保育所の場合は「保育指針」ですが、同じ「幼児期の教育」として、「幼稚園教育要領」の改訂と歩調を合わせて改訂されることになっています。次期改訂で「幼稚園教育要領」がどうなるのか、見ていきましょう。

小学校の「スタートカリキュラム」につなげて

幼児期の教育は、教科を中心とする小学校以上の教育と違って、遊びを中心とした生活を通じて、生涯にわたる人格形成の基礎を培うことが基本です。現行の幼稚園教育要領では「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」という5領域が示されていますが、これらをバラバラに指導するのではなく、さまざまな体験を積み重ねるなかで、お互いを関連させながら、徐々に育むこととしています。

一方で、「小1プロブレム」に代表されるとおり、幼児期の教育と小学校教育との円滑な接続が、大きな課題になっています。さらに次期改訂では、幼小接続にとどまらず、高校卒業までを一貫した学びの過程として、さらには大学や社会などとの接続までをも展望して、「育成すべき資質・能力」を明確にしていこうとしています。

そこで、次期の教育要領では、引き続き5領域を維持しつつも、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」として、以下の事項を示すことになりました。

1. 健康な心と体
2. 自立心
3. 協同性
4. 道徳性・規範意識の芽生え
5. 社会生活との関わり
6. 思考力の芽生え
7. 自然との関わり・生命尊重
8. 数量・図形、文字等への関心・感覚
9. 言葉による伝え合い
10. 豊かな感性と表現

これらの「力」を就学前に十分育んだうえで、小学校の入学直後には、生活科を核とした「スタートカリキュラム」と呼ばれる総合的な授業を行い、各教科の本格的な学びへと円滑につなげようとしています。

「学びに向かう力」が重要

上記の10の姿の育成は、小学校教育の前倒しということではありません。むしろ幼児期の豊富な体験によって身に付けた学びの基礎が、グラデーションのように小学校の各教科へとつながっていく……というのが、次期改訂での考え方です。国際的にも、「社会情動的スキル」「非認知能力」を幼児期にしっかりと育むことが、生涯の学びにとって重要だと指摘されています。

ベネッセ教育総合研究所の縦断調査(追跡調査)でも、幼児期に身に付けた多様な力が、小学校以降の学びにつながっていく複雑なメカニズムが、明らかになりつつあります。ここで示された「学びに向かう力」は、次期改訂で育成すべき資質・能力としても重要な役割を占めています。

幼児期の教育は、幼稚園や保育所、認定こども園にとどまりません。家庭教育や地域での教育も含まれます。ご家庭でも、遊びを中心とした豊富な生活体験を通じて、学びの基礎をしっかりと育んでいけるようにしたいものです。

  • ※中教審 教育課程部会 幼児教育部会
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/057/index.htm
  • ※ベネッセ教育総合研究所「幼児期から小学1年生の家庭教育調査・縦断調査」(2015<平成27>年)
  • http://berd.benesse.jp/jisedai/research/detail1.php?id=3684

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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