算数・数学の答えは一つじゃない!? 日常生活の解決にも

算数・数学といえば、テストで出された問題に対する「正しい答え」を出すための勉強をする教科、という印象を持っているかたが少なくないのではないでしょうか。しかし最近は、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のB問題に見られるように、日常生活に関するデータなどを読み解きながら考えさせる学習も、大きな課題となっています。
2020(平成32)年度から順次実施される予定の次期学習指導要領では、そうした方向性がさらに強化される見通しになっています。大学入試でさえ、複数の正解があり得る問題が出題されようとしています。「答えは一つだ」という思い込みは、捨てなければいけなくなるかもしれません。

解決のプロセスや見方・考え方を重視

「社会に開かれた教育課程」をキーワードにして、どの教科等でも、育成すべき資質・能力を、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性等」という、共通した「三つの柱」に沿って明確化するというのが、次期指導要領改訂の眼目です。

そうした全体の方針を受けて、算数・数学では、日常生活や社会の事象を数理的に捉え、数学的に表現・処理して問題を解決するとともに、解決の過程を振り返って、結果の意味を振り返るという学習プロセスを大切にしながら、数学的な概念を形成・体系化できるようにすることを目指したい考えです。そのために、アクティブ・ラーニング(課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び、AL)でも、意見交換や議論などの際に、あらかじめ自分の考えを意識させたうえで、主体的に学習に取り組めるようにすべきだという方向性が、徐々に固まっています。

次期指導要領では、どの教科等にも、その教科ならではの見方・考え方を明確化することにしています。今までも算数・数学では、「数学的な考え方」を育成することを目指してきました。これからの算数・数学でも、数学的な見方・考え方の育成が、いっそう重要視されることでしょう。

新テストの記述式問題でも問われる

そうした時に、思い起こされるのは、大学入試センター試験に代えて2020(平成32)年度から創設される「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」(対象は現在の中学2年生から)です。

今年3月にまとまった「高大接続システム改革会議」の最終報告は、思考力・判断力・表現力を含めた、幅広い資質・能力を把握できるよう、マークシート方式でも複数の段階にわたる判断が必要な問題を出題する他、図やグラフを描いたり式を立てたりする記述式問題を導入することを求めています。とりわけ数学と理科には、「事象の中から本質的な情報を見いだし、構造化し、解決する力など、思考力・判断力・表現力を構成する諸能力に関する判定機能を強化する」としています。

高大接続改革では、「答えのない問題に答えを見出す力」も含めた、問題発見・解決能力の育成を目指しています。「答えは一つ」という思い込みを抱いたままでは、数学はもとより他教科でも、入学者選抜で高い評価を受けることができなくなるかもしれません。大学、そして社会では、もっと正解のない問題に取り組むことが求められるからです。

  • ※中教審 教育課程部会 算数・数学ワーキンググループ
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/073/index.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

子育て・教育Q&A