地歴・公民も「探究」中心に 暗記科目から脱却へ

高校の地理歴史科(地理A・B、世界史A・B、日本史A・B)や公民科(現代社会、政治・経済、倫理)というと、「暗記科目」という印象が強いかたも多いのではないでしょうか。もともとはそうではないはずなのですが、いま検討されている次期の学習指導要領では、「探究」中心にシフトしようとしています。これに伴って、小中学校の社会科の在り方も変わってきますし、改訂を待たず、入試の出題傾向も変わってくるかもしれません。

地理総合も必修、現社は「公共」へ

中央教育審議会の部会などでは、高校の社会科系科目(いずれも仮称、◎は必履修)を、と下記のように再編する方針が固まっています。

【地歴科】

◎地理総合、地理に関わる探究科目、◎歴史総合、世界史に関わる探究科目、日本史に関わる探究科目

【公民科】

◎公共、倫理、政治・経済

公民科をめぐっては、選挙権年齢の18歳引き下げ(今夏の参院選から実施の見通し)に伴って、主権者教育を担う必履修科目「公共」の創設が注目されています。これまで地理歴史科の必履修科目は、世界史AかBのどちらかと、日本史A・B及び地理A・Bの中から1科目で、地理と日本史はどちらか一方を学べば卒業できました。次期指導要領では、改めて「地理総合」を必履修に加えるとともに、世界史と日本史を統合した「歴史総合」を必履修にします。

こうした科目再編は、単なる組み合わせの変更にとどまりません。学習内容の扱い方や、授業の在り方も、大きく変わることが想定されます。象徴的なのが、科目名に仮称ながら「探究」という言葉が入っていることです。また、「総合」科目についても、決して<広く薄く>学ぶものではありません。

歴史は現代から<さかのぼり>で考察

たとえば歴史総合は、「近代化」「大衆化」「グローバル化」をキーワードに、現代的な諸課題につながる歴史的な状況を考えさせることに主眼を置きます。そうして身に付けた「歴史の学び方」をもとに、選択科目の世界史と日本史では、資料に基づいて考察したり、現代につながる諸課題を多面的・多角的に追究したりする学習活動を展開することにしています。

歴史系科目はどうしても、大学入試などで求められる知識が膨大なため、暗記に追われるという実態があったことは否めません。そのため、重視しているはずの近現代史まで教科書が終わらないといったことも、往々にしてありました。そうした在り方を徹底的に見直し、さかのぼり方式で、今につながる歴史として生徒自身に考えさせることになります。地理も「持続可能な社会づくり」のため、地図だけでなく地理情報システム(GIS)を使ったり、国際理解と国際協力、防災などを考察・探究させたりすることにしています。

新科目の公共では、倫理的、あるいは政治的・経済的・法的にも、自立した「主体」となって社会に参画することを目指します。単に知識を覚え、社会的な出来事にはさっぱり関心が湧かない……といったことでは済まされません。

次期指導要領では、どの教科にも「アクティブ・ラーニング」(課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び、AL)と呼ばれる授業形態を導入することが求められています。社会科や地歴・公民では、まさにALを通じて考察・探究する活動が中心になっていくことでしょう。とにかく暗記すればよいという姿勢は、もう通用しません。

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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