中2以降の大学入試と教育はこうなる……?

大学入試・高校教育・大学教育を一体で改革する「高大接続改革」について、文部科学省の有識者会議が先頃、最終報告をまとめました。今後どうなるのでしょう。この春、中学2年生になったGさんと、小学4年生になったJさんのきょうだいを持つ、B家の未来をのぞいてみましょう。

●2019(平成31)年度

いち早くパソコン教室を「アクティブ・ラーニング(AL)室」に改修したことなどで、中堅校ながら評判の高校の2年生になったGさんは、担任の先生から、新たに始まる「高等学校基礎学力テスト」に、学校ぐるみで参加すると告げられました。全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の高校版だという説明ですが、受検料として数千円が徴収されます。学区一番の進学校に進んだ中学校の同級生は「うちは参加しないよ」と言っていましたが、学校行事や定期テストのない時期に、国語・数学・英語の3教科の問題をパソコンで解くのは、ちょっと面白い経験でした。隣の高校では、行事の都合で違う時期に実施しますが、提供される問題セットが違うので、大丈夫なのだそうです。

●2020(平成32)年度

中学2年生になったJさんの学校では、来年度から学習指導要領が変わると大騒ぎです。一方、高校3年生になったGさんの学校では、前年度の基礎学力テスト結果を受けて、3教科はもとより、どの教科の先生も、授業を改善しようと意気込んでいます。大学進学を希望しているGさんは、今年度から始まる「大学入学希望者学力評価テスト」を受けなければなりません。こちらは大学入試センター試験と同じく全国一斉・同一問題ですが、まず各問40字以内で解答する国語と数学の記述式テストが先にあって、2か月後に、5教科のテストが実施されます。正解が一つではない問題もあるというから、驚きです。英語は「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能が出題されますが、英検やGTECなどの資格・検定試験を受けていれば、代替することもできるそうです。

個別大学の試験では、推薦・AO・一般といった入試区分が一斉に廃止され、高校時代の活動報告書や、大学入学後の学修計画書など、大学が指定するさまざまな書類を提出しなければなりませんが、高校で「総合的な学習の時間」をはじめ、多様な学習に取り組んできたGさんは、書くことがいっぱい。定評のある大学に合格できましたが、その高校から進学するのは初めてだそうです。

●2024(平成36)年度

高校3年生になったJさんは、次期指導要領の適用に伴い、学力評価テストに「情報」と「数理探究」が加わるだけでなく、記述式テストで書く文字数が数百字に増やされます。実施までには、ペーパーテストからCBT(コンピューター使用型テスト)方式に切り替えられるかどうか、大騒ぎしていました。Jさんを尻目に、大学卒業を控えたGさんは、4年間たっぷり鍛えられたお陰で、多くの企業から内定を得ていました……。

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この記事はフィクションです。「高等学校基礎学力テスト」「大学入学希望者学力評価テスト」の名称は変わっているはずですし、実施方式なども予定どおりに実現するとは限りません。しかし、入試方法だけに右往左往するのではなく、高校での多様な学習をしっかり行い、意欲的な大学生活につなげることが、第一です。

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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