「主体的・能動的な学び」はどうすれば?

ベネッセ教育総合研究所が9年ぶりにまとめた「第5回学習基本調査」の結果は、小・中・高校生の学校外での勉強時間がV字回復を遂げたことで注目を集めました。今回の調査にはもう一つ、重要なポイントがあるといいます。「主体的・協働的な学び」の実態を明らかにしていることです。

主体的・協働的な学びといえば、現在、中央教育審議会で検討している学習指導要領の改訂で、アクティブ・ラーニング(課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び、AL)の導入が検討されています。「総合的な学習の時間」でやっているような学習形態を、教科などにも全面的に広げようというものです。

授業で好きな学習方法を尋ねたところ、「個人(自分一人)で何かを考えたり調べたりする授業」「いろいろな人に話を聞きに行ってする授業や調査」「考えたり調べたりしたことをいろいろ工夫して発表する授業」が好きだという割合が、小・中・高校生とも上昇しています。それとともに、総合学習が好きだという割合も増えています。

こうした学びは、現行の指導要領でも重視しているのですが、次期指導要領では、ALという形で更に強化したい考えです。たとえ社会に出た時に、今ある仕事の半分がなくなっているような大変化が起こっていても、新たな時代に対応できるような資質・能力へと発展させることを目指しています。今から主体的・能動的な学びが好きな子が増えているということは、今後、ALを盛んにできる土壌が育っているということであり、21世紀型の学びを進めるうえで大いに期待が持てる結果といえます。

ところで、学習時間のV字回復は、いわゆる「ゆとり教育批判」に応える形で各学校が学力向上に取り組んだことが、大きな要因でしょう。ただ、もう一つ重要なことを見逃してはいけません。学力向上対策の中で、単なる知識の習得だけでなく、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のB問題で問われるような「活用」の力、さらには国際的な学力調査で問われる「PISA型学力」の向上を目指した学校も少なくなかったことです。

実は、活用の力を伸ばすには、しっかりした知識の習得が不可欠だということが、この間の学校現場の取り組みで、徐々に見えてきました。一方、習得が十分でなければ活用ができないというものでもなく、両者が相乗効果のような形で、意欲を含めた学力を伸ばすという報告も、各地から挙がってきています。調査結果は、それを裏付けるデータだと見ることもできます。

AL時代には、学校では対面でしかできない主体的・協働的な学びに、多くの時間を割くことが求められます。その分、基礎的な知識は、家でしっかり予習・復習する必要が、ますます出てくるでしょう。そうした知識を持って学校で主体的・協働的な学びに取り組んだ時、社会に出ても役立つ思考力・判断力・表現力などが伸びるとともに、知識もしっかり定着するのです。

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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