スクールカウンセラーやソーシャルワーカー、期待高まるけれど……?

学校は教職員だけでなく、心理や教育相談などの専門スタッフも加えて……。中央教育審議会が昨年末の答申で打ち出した「チーム学校」方針によって、スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)の存在に、改めて注目が集まっています。文部科学省も、SCやSSWの役割を含めた教育相談体制についての検討を始めました。しかし、教員や事務職員などと同様に、日常的な業務を担うには、まだまだハードルが高いようです。
  • ※中教審答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/01/26/1365657_01.pdf

SCは、不登校・いじめ問題などをきっかけに、文部省(当時)が1995(平成7)年度から、全国の公立学校に配置するための調査研究を開始。2001(平成13)年度からは都道府県・政令指定都市教育委員会への補助事業(補助率3分の1)となっており、現在は2万2,000人以上が派遣されています。2016(平成28)年度予算案でも、大きな課題を抱える中学校で週5日相談できる体制を構築するなどの充実を図っています。

  • ※2016(平成28)年度文科省予算・初等中等教育局説明資料
  • http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2016/01/08/1365888_5_1.pdf

これまでSCには決まった資格がなく、多くは公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する「臨床心理士」ですが、大学教員や精神科医、専門の勉強をした元教員などが充てられることもあります。そうしたなか、昨年9月に「公認心理師法」が成立し、2018(平成30)年度以降、新たな国家資格がスタートする見込みとなりました。

SSWも同様に、決まった資格があるわけではありませんが、教育分野はもとより社会福祉などの専門知識や経験を持つ人とされています。文科省は2008(平成20)年度に調査事業を行い、09(同21)年度からは活用事業(現在は中核市も含め補助率3分の1)を行っていますが、そこでは、社会福祉士や精神保健福祉士などの資格を求めています。

貧困家庭の増加や児童虐待の深刻化などを受けて、2015(平成27)年度予算では2,247人プラス貧困対策加配600人への拡充が計上されており(14<同26>年度予算1,466人、実際の派遣人数は1,186人)、16(同28)年度予算案では3,047人プラス1,000人と、更なる増加を図っています。

ただし、これらはいずれも「派遣」であり、常勤職ではありません。もちろん私立では常駐のSCを採用しているところもありますし、教育委員会によっては常勤に近い体制を取っているケースもあります。しかし、従来の臨床心理士や、今後の公認心理師は、大学院修了が基礎資格とされています。非常勤のままでは、学歴や専門性に見合った処遇が十分に受けられません。今後、多くの人にSCやSSWを目指してもらうには、安定した常勤職とする必要があるでしょう。

中教審答申では、SCやSSWの職務を法令上明確化するとともに、将来的には学校の正規職員とすることを検討するよう求めています。ただ、ここで「将来的に」とあるように、財政削減のため教職員数を何とか減らそうと攻勢を強める財務省などを押し切るのは、容易なことではなさそうです。

しかし、SCやSSWが「チーム学校」の一員として、子どもや家庭への相談はもちろん、教員などとの日常的な連携などに役割を発揮するには、常勤化が欠かせません。職務の明確化や補助事業の拡充にとどまらず、早急な検討が求められます。

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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