変わる「学力」 豊かな体験の裏付けも
入試シーズンが本格化していますが、この時期にクローズアップされるのが、「学力」です。ただ、現在の学力は、必ずしもペーパーテストで測れる知識や、その活用力だけを対象とするものではありません。「生きる力」と言われるように、子どもたちが将来の不透明な社会を生き抜くため、幅広い学力が必要とされています。
生活スキル(技能)に関して、実態調査を行った国立青少年教育振興機構は、このほど結果をパンフレットにまとめ、親子で一緒に体験活動を行うことで、生活スキルを育むようアピールしています。そこでは、生活スキルを「コミュニケーションスキル」「礼儀・マナースキル」「家事・暮らしスキル」「健康管理スキル」「課題解決スキル」の5つに分類しました。
これらは単に将来、社会人として生活するために必要なスキルにとどまりません。「課題解決スキル」が入っていることからもわかるように、幅広い学力の基盤となるものです。
社会に出れば、学校のようにあらかじめ答えの決まっている課題ばかりではありません。自分なりに問いを設定し、これが最善だろうという解決策を導き出したうえで、実行することまで求められます。それも、必ずしも一人で行うのではなく、プロジェクトなど複数の人とチームを組んで対応する場面も多々出てきますから、コミュニケーションスキルは不可欠になります。
こうした「情意」に関わるスキルを、積極的に学力の中に位置付けようという機運が、国内のみならず、国際的にも起こっています。
代表的な国際学力調査PISA(生徒の学習到達度調査)の実施で知られる経済協力開発機構(OECD)が、ベネッセ教育総合研究所とも共同して「社会情動的スキル」を研究しています。OECDでは、日本政府とも政策対話を深めながら、2030年の教育の在り方を提唱しようというプロジェクトを進めています。そこでは、PISAの枠組みでもある「キー・コンピテンシー」(主要能力)の再定義が中心課題になっており、とりわけ学校のカリキュラムで、(1)知識(2)スキル(3)情意(当初は「人間性」)を育成すべきだという考えを打ち出す方向で検討しています。
- ※文部科学省 「法令上定められている教育の目的・目標について 資料」
- http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/09/24/1361110_2_4.pdf
文部科学省は、これを日本の「学力の3要素」(知識・技能、思考力・判断力・表現力、学習意欲=主体性・多様性・協働性)に対応するものだと考え、次期の学習指導要領(2020<平成32>年度からの小学校を皮切りに順次、全面実施の見通し)で、さらに綿密な「資質・能力」(コンピテンシー)の構造化を図ろうとしています。
入試で問われる学力は、子どもの将来にとって一つも無駄にならないことは言うまでもありません。しかし、入試だけに通用する<狭い学力>にとどめてはいけません。幼児期から青年期までの発達段階に応じた、豊かな生活・学習体験に裏付けられてこそ、アクティブ・ラーニング(AL)で求められる「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」が実現するのです。