外国ルーツの子ども支援は「日本」のためにも!?‐渡辺敦司‐

グローバル人材の育成が叫ばれています。文部科学省は英語教育の充実はもとより、「トビタテ!留学JAPAN」で大学生や高校生が海外に出ていくことを応援しています。しかし、そうした対策だけがグローバル化対応ではないでしょう。以前お伝えしたように、国内は既に外国にルーツを持つ子どもが多数存在しています。そうした子たちの存在こそが、日本におけるグローバル化を大きく飛躍させる可能性を秘めているのです。

文科省は先頃、学校での外国人児童生徒への教育支援を検討するため、有識者会議を発足させました。喫緊の課題が「適応指導」であることも事実です。同省によると、外国人児童生徒数は2014(平成26)年5月現在で7万8,630人を数え、そのうち93%(7万3,289人)と大多数が公立学校に在籍しています。日本語指導が必要な外国人児童生徒は2万9,198人と、年々増える傾向にあります。もう一つ無視できないのが、日本国籍を持っていても日本語指導が必要な児童生徒で、2012(平成24)年度比1,726人増の7,897人を数えます。

単に数が増えているだけではありません。近年の傾向は、使用言語がタイ語・ネパール語・インドネシア語など多様化していること、日本語指導が必要な児童生徒が1か所に固まる(集住化)一方で、各地に広がる(散在化)という両極端があることだといいます。半数の市町村にそうした児童生徒がいるといいますから、全国どこでも対応が必要になっているということができます。
事情をさらに複雑にしているのが、保護者との関係です。日本語をうまく話せない保護者はもとより、日本で育ったために母語すら不十分な保護者さえいます。子どもたちは、言語の習得だけでなく「自分は何人か?」と戸惑うといいます。貧困の連鎖だけでなく、アイデンティティーの危機まで連鎖してしまっては、安定した子ども時代を送ることはできません。

だからこそ、ピンチをチャンスに変える教育の役割が重要になります。委員の一人、静岡文化芸術大学(浜松市)の池上重弘教授は、日本人学生と同じ入試枠で入ってきた学生を「本物のグローバル人材だ」と評しました。ブラジルの母語であるポルトガル語に日本語、英語、さらには努力して中国語さえ身に付ける学生もいるといいます。そうした学生が「日本と世界をつなぐ人物」になってくれるというわけです。
外国にルーツを持った子どもが将来、「日本人」のグローバル人材として活躍し、経済成長に貢献してくれる。そうした可能性を秘める子どもと一緒に学ぶことで、代々日本生まれの日本人も、小さいころからグローバル化の素養を身に付ける……そんな好循環が生まれれば、何よりです。

グローバル化というと、日本人はどうしても欧米のことばかり思い浮かべてしまいます。しかし、これからのグローバル社会で一緒に仕事をするのは、アジアを中心とした、もっと多様な国々の人たちです。そのためにも「隣の外国人」と共に学ぶことが、日本のグローバル化の第一歩になるといえるのではないでしょうか。

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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