日本の教育、実は輸出するほどスゴい……?

学力が低下している、いじめや不登校がなくならない、先生が部活など授業以外で忙しい……。国内の目からすると、問題点だらけに見えるニッポンの教育ですが、文部科学省によると、初等中等教育や、高専など工学系人材の育成などは「諸外国から高く評価されている」といいます。同省の来年度概算要求(外部のPDFにリンク)では、「日本型教育の海外展開」として、官民を挙げた協力体制で、各国のニーズに合わせつつ、日本型教育をパッケージとして<輸出>したい考えです。

概算要求によると、文科・経済産業・外務の各省庁と独立行政法人の国際協力機構(JICA)や日本貿易振興機構(JETRO)、地方公共団体、大学・高専・学校法人、NPO、民間企業などが「日本型教育の海外展開官民協働プラットフォーム(仮称)」を立ち上げ、オールジャパン体制で情報を共有し、日本の教育を海外展開していくことを目指します。今までも職業教育など個別の協力関係はありましたが、「より層の厚い海外展開の案件形成を目指す」のが特色です。

現在の日本の発展が、明治以降、さらには戦後の教育を基盤にしてきたものであるということは、国内外とも一致した見方であると言ってよいでしょう。それだけに国内では、教育のひずみや課題のほうに目が向きがちですが、新興国などを中心に「日本式教育制度を採り入れたい」という国も少なくないといいます。

先進国側も同じです。代表的な国際学力調査であるPISA(生徒の学習到達度調査)を実施する経済協力開発機構(OECD)も、これまで、日本が「学力低下」していたという見方を採ってこなかったということは、既に4年前の記事で紹介したところです。むしろ、当時起こった東日本大震災も例として、日本の学校や教員の潜在能力を高く評価していました。そのOECDは、被災地からの教育復興プロジェクト「OECD東北スクール」(事務局・福島大学)の成果も踏まえ、今年3月から日本との政策対話を始め、その成果をもとに「Education 2030」として、将来あるべき教育の姿を共同で提案していこうとしています。

次期学習指導要領の基本方針を示した中央教育審議会の特別部会「論点整理」の中では、「日本の改革は、もはや諸外国へのキャッチアップではなく、世界をリードする役割を期待されている」とまで言っています。少し浮かれすぎでは……と逆に心配になりますが、子どもだけでなく大人も自己肯定感が低い国民感情からすれば、ダメだと思っていた日本の教育のよいところに気付き始めたのは悪いことではないのかもしれません。

ただ、自国の素晴らしさを強調し過ぎて、独善に陥ってはいけません。OECDにしても、PISAをはじめとした各種調査や視察に基づいて、客観的に日本の強みと弱みを分析しているのです。そう考えれば、今回の「輸出」は、日本の教育を国際的な視点で見つめ直すきっかけになるかもしれません。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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