「アクティブ・ラーニング」、実は既に行われている?

次期学習指導要領の目玉になっている「アクティブ・ラーニング」(課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び、AL)について、早くも学校現場の関心が過熱気味になっていることは、以前の記事でも紹介しました。その中で、「既に小・中学校の授業は十分アクティブ。取り組みが遅れている高校へのインパクトを考えてのことだろう」という見方があることも紹介したところです。実際、小・中学校ではALに当たる学習形態が既に広がっていることを示す結果が、今年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の学校質問紙調査(外部のPDFにリンク)にあります。

調査では、前年度までの授業で「児童生徒自ら学級やグループで課題を設定し、その解決に向けて話し合い、まとめ、表現するなどの学習活動」を取り入れたかどうかを尋ねています。ALの実施が提言されていることを受けて、初めて質問項目に加えたものです。その結果、「よく行った」と答えた学校の平均正答率は、算数・数学のB問題(主に活用の能力を問う問題)が小中学校とも40%台、中学校理科で50%台だったのを除けば、60~70%台の高率です。

もちろん、ALが大きな効果を発揮するはずの算数・数学の活用問題や理科で、平均正答率が比較的低調だというのは問題なのですが、学校としてはALに取り組む萌芽が既にあると言ってよいでしょう。しかも、こうした学習活動を採り入れている学校ほど、ペーパーテストの成績もよくなる傾向があるという結果が出ていますから、知識の習得(全国学力テストではA問題での出題対象)にもALは有効であることが証明された格好です。

こうした学習活動は、現行の学習指導要領において「言語活動」(外部のPDFにリンク)として重視されているものです。言語といっても、国語や外国語に限定されるものではありません。ほかの教科でも、記録・説明・批評・論述・討論などの学習を採り入れてもらうというのがねらいです。知識・技能を活用して、思考力・判断力・表現力を育むためです。
ただし、現行指導要領の言語活動は、あくまでその教科の目標を達成するため、つまり、各教科で育もうとする思考力・判断力・表現力を身に付けさせるためのものです。一方、今回あえてALという言葉を使っているのは、次期の指導要領(外部のPDFにリンク)では、思考力・判断力・表現力の育成を教科内にとどめるのではなく、教科を超えた「育成すべき資質・能力」にまで高めるために、(1)習得・活用・探究のプロセスを通じた「深い学び」 (2)他者との協働などを通じて自分の考えを広げ、深める「対話的な学び」 (3)見通しを持って粘り強く取り組み、自分の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」……にまで深めることを打ち出しています。

小中学校では活動自体が既に各教科の言語活動として行われているのだから、あとは一工夫を加えれば、子どもたちの資質・能力をさらに高めることは十分可能だというわけです。問題は、言語活動の充実が求められているにもかかわらず、大学入試を意識し過ぎて、依然として知識偏重・一方通行の講義中心であるとされる、高校の授業です。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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