子どもの「理科嫌い」をくい止めるには……?

今年4月に実施された、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果が発表になりました。今年度の大きな特色は、実施前に紹介したように、3年ぶりに理科を実施したことです。調査対象となった中学3年生は、3年前の小学6年生の時に、前回の理科の調査を受けていました。前回の小6と今回の中3の結果を比較することで、同じ学年の小学校から中学校にかけての変化が明らかになる、というわけです。

その中で、注目すべき変化がありました。小学6年生だった前回、「理科の勉強が好き」と回答した子どもは81.5%にも上っていたのですが、中学3年生になった今回は61.9%と、約20ポイント減ってしまいました。これは、算数・数学の8.9ポイント減(前回65.1% → 今回56.2%)と比べても、大幅な落ち込みです。
同様に、「理科の勉強は大切」との回答は前回86.4% → 今回69.7%で16.7ポイント減(算数・数学は10.3ポイント減)、「理科の勉強がわかる」も86.0% → 66.9%で19.1ポイント減(同7.4ポイント減)と、やはり数学に比べても落ち込みが激しかったのです。また、「理科の勉強は役に立つ」は73.4% → 54.6%で18.8ポイント減(同18.1ポイント減)と、多くの中学生が数学ともども「役立ち感」を持てずにいます。

こうした結果については、「もともと理科は、中学校になったら格段に内容が難しくなるので、仕方ない」と見ることができるかもしれません。しかし、この学年が学んできた授業や、これからのことを考えると、決して軽視することはできません。

今年の中3といえば、理科の学習が始まった小3の時に、ちょうど現行学習指導要領の移行措置が始まり、授業時間数や学習内容が増加された学年でした。つまり、新課程の理科教育を最初から受けている学年なのです。その学年が小6の時に受けた全国学力テスト(外部のPDFにリンク)では、知識だけでなく「活用」の力にも課題があることが指摘され、中学校の理科では「課題を解決するための観察・実験を計画する指導の充実」「観察・実験の結果を分析し解釈して説明する指導の充実」「科学的な知識や概念に基づいて説明する指導の充実」などが求められていたのです。

それにもかかわらず、理科の勉強がわからなくなり、嫌いになる子どもが増えたということは、中学校での新課程の実施自体に課題があったといわざるを得ません。理科室で生徒が観察・実験を行った学校がそれほど増えていないことや、生徒が自分で仮説を立てて観察・実験の計画を立てさせる指導を「よく行った」学校がまだまだ多くないなどの結果とあわせると、まだまだ授業に改善の余地があるというべきでしょう。

今後の理科では、観察・実験の結果をもとに、話し合ったり、考えたことを表現したりする活動が、ますます求められるようになります。理科で学んだことを社会や生活で生かすためにも、中学校最後の学年はもとより、高校などに進んでからも、理科で求められる資質・能力を伸ばす対策に力を入れてほしいものです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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