「教科を超えた力」が社会や進学でも不可欠に……?

8月末にまとまった次期学習指導要領の基本方針では、小学校英語の教科化や高校の科目見直し、さらにはアクティブ・ラーニング(AL)の導入などが注目されています。しかし最も大きなポイントは、過去の記事でもたびたび紹介してきたように、教科の枠を超えた「資質・能力」(コンピテンシー)の育成を打ち出したことだといっても過言ではありません。それが今後の21世紀を生きる子どもたちに不可欠であるということはもとより、大学入学者選抜でも具体的に問われるようになる……となれば、保護者や学校にとっても今から注目せざるを得ないでしょう。

中央教育審議会の教育課程企画特別部会がまとめた「論点整理」では、「社会に開かれた教育課程」を目指し、各教科はもとより「総合的な学習の時間」や特別活動、道徳教育で育成すべき資質・能力を、学校教育法で規定する「学力の3要素」に沿って、(1) 個別の知識や技能(2) 思考力・判断力・表現力等(3) 学びに向かう力、人間性等……の柱を立て、マトリックス状に「構造化」しています。

何だか難しくて、関係者だけがわかっていればよい話のようにも思えます。しかし、こうした提言からは、これまでのように教科内に閉じた発想だけで授業を行ったり受けたりするのではなく、教科横断的に今後の社会に必要とされる力を、学校教育や学習の全体で育まなければいけないのだ……というメッセージを受け止めるべきでしょう。
今までは、各教科の授業や勉強にしっかり取り組み、それを全教科合わせれば、社会で役に立つ力が自然と身に付くものだという想定がありました。しかし、実際には教科の枠の中に閉じた「テスト問題を解く力」に終始してきた傾向があったことも否めません。今後はむしろ逆に、社会で必要な力とは何かを考え、それを資質・能力として具体化したうえで、それぞれの育成をどの教科等で担うべきかという発想が必要になってくるのです。

もちろん、そうした授業をどう展開するかは、個々の学校や先生の努力にかかっています。児童・生徒の側は、そうして変化する授業の勉強に一生懸命がんばればよいわけです。ただし学ぶ側にも、これまでのように「これは理科の勉強で、国語ではない」といったような意識ではなく、各教科等の授業で学んだことを、自分で積極的に結び付けて考えたり、話し合ったりする前向きな姿勢が、ますます求められることでしょう。

しかも、「論点整理」の翌日に決定された文部科学省「高大接続システム改革会議」中間まとめでは、焦点の「高等学校基礎学力テスト」「大学入学希望者学力評価テスト」(いずれも仮称)で、現行指導要領の下でも、次期指導要領も念頭に置いた思考力・判断力・表現力を問う問題を出すとしています。新指導要領下の学力評価テストでは、数学と理科を合わせた高校の新科目「数理探究」さえ出題されます。今後、「脱・教科主義」の発想が、学校にも学習者にも、ますます必要になってくるのです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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