現役の大学進学率は上昇したけれど……迫る「2018年問題」

今春に高校を卒業した者の大学・短大進学率が過去最高を更新したことが、文部科学省の2015(平成27)年度学校基本調査の結果(速報)でわかりました。しかし、入学者の確保に頭を悩ませる大学関係者は、胸をなで下ろすどころか、近い将来に恐々としています。入学者が再び減少することが予想される「2018年問題」を間近に控えているからです。

確かに同調査によると、現役で大学・短大に進学したのは58万4,000人(前年度比1万7,000人増)と増加に転じており、現役進学率も54.6%(同0.7ポイント増)に上昇し、2010(平成22)年度(54.3%)を上回りました。
これに伴って、入学定員を満たせない私立大学の数も減少しています。日本私立学校振興・共済事業団の調査(外部のPDFにリンク)では、定員充足率100%未満(定員割れ)の大学(学部)は43.2%(同2.6ポイント減)に当たる250校(同15校減)でした。

だからといって、このまま進学者が増え続けるのか……というと、そうはいきません。
高校卒業者など、大学・短大などの主な進学年齢である「18歳人口」は120万人で、前年度より1万9,000人増えています。つまり、現役の進学者が増えたのは、高卒者のうち大学・短大に進学する割合が増えたためというより、18歳人口という全体のパイが広がったためという要因のほうが大きいのです。実際、浪人(過年度卒業生)を含む進学率は0.2ポイント減の56.5%と、過去最高だった2010(平成22)年度(56.8%)に達しませんでした。大学・短大入学者は67万9,000人と、約9,000人の増加にすぎません。

進学率が頭打ちだとすると、今後の入学者数を左右するのは18歳人口の推移ということになります。文科省などの推計(外部のPDFにリンク)によると、18歳人口は2017(平成29)年度まで119万~120万人と横ばいが続くものの、18(同30)年度以降は118万人 → 117万人 → 117万人 → 114万人 → 112万人と年々減っていき、24(同36)年度には106万人まで落ち込みます。これが、「2018年問題」と呼ばれるものです。2031(平成43)年度には100万人を割るとさえ推計されていますから、いつまでも18歳人口を当て込んでいては大学経営に未来はない……ということで、大学関係者は生き残り策の模索に今から必死になっているというわけです。

大学で組織運営の見直しが求められ、それに伴って大学教育や入試の改革も急速に進む可能性が高いことは、既にお伝えしました。一方で大学には、グローバル化やイノベーション(革新)を担う人材の育成が期待されています。18歳人口が減少する分、一人ひとりの若者の資質・能力を高めて、社会で十二分に活躍してもらわなければ、日本全体の将来もありません。1点刻みの入試を排してまで、大学入学者選抜の改革を断行しようとしているのも、そうした時代に対応するためという、大きな背景があるのです。

今後も大学側は生き残りを懸けて、社会の要請に応えようと必死で改革を進めていくことでしょう。学生の側も、過去の評判だけにとらわれず、変わる教育内容を見極めて、自分を本当に伸ばしてくれる大学選びをする必要があるでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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