幼児教育無償化や大学教育費軽減は遠い話? 検討は消費税10%のあと

政府の教育再生実行会議が、教育費の在り方に関する第8次提言(外部のPDFにリンク)をまとめました。第2次安倍内閣の発足以来、教育再生を経済再生と並ぶ内閣の最重要課題と位置付けてきた同会議の、実質的な最後を飾るにふさわしい、重厚なテーマです。ところが、教育財源をどう確保するかといえば、8%から10%への消費税アップが先送りされた2017(平成29)年度のあと、さらなる消費増税が検討される際に、その使い道を社会保障だけでなく教育にも広げられないかという話です。中央省庁では来年度概算要求の提出時期が迫っていますが、しばらくは厳しい予算折衝が続きそうです。

来年度予算をめぐって財務省が、公立学校の先生の数を減らすべきだと提案したことは、先の記事で紹介しました。提案の是非はさておき、そこには1,000兆円を超える借金を抱える国の財政を健全化するため、どうにかして予算を減らそうという財政当局なりの危機意識があります。これには、文科省や教育関係団体はもとより、衆参両院の文教関係委員会や地方自治体も猛反発。政府・与党内で調整した結果、6月に閣議決定された今年の「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針2015)では「削減という文言は入らない」(文科省財務課)結果となりました。しかし、必要な教育予算を確保するだけでも大変な攻防を毎年繰り広げなければならないという綱渡りが続く状況に、変わりはありません。

こうした状況を受けて、第2次安倍内閣の発足とともに就任した下村博文文部科学相が、早くから教育財源確保の抜本策を探ってきたことも、当時の記事で紹介してきました。
9月に控える自民党の総裁選を見越して、教育再生実行会議の集大成のテーマに残したのが、今回の「教育投資・教育財源の在り方」です。そこでは、少子化の克服や、貧困の連鎖を解消するためにも、「幼児教育の段階的無償化」と「高等教育段階における教育費負担軽減」に優先して取り組む必要があるという文言を盛り込みました。自ら交通遺児として苦学した経験のある、下村文科相の執念ともいうべき提言です。

しかし、よく読むと「中長期的には」「幅広い国民の理解を得た上で」「例えば、将来的に、消費税の見直しが検討されるのであれば」「『教育』にも広げることを検討することも考えられます」といったように、ずいぶん慎重な書きぶりです。実質的には、消費税を10%から更に引き上げようという議論が始まったあかつきには、検討に載せてもらおう……という、気の長い話だといわざるを得ません。

ただ、教育費の抜本的な拡充のためには、消費税かどうかはともかく、どこかから財源を確保しなければならない状況にあることは確かです。第8次提言が指摘するように、教育投資が子育て世代だけでなく社会全体に利益をもたらすこと、そのためには国民全体でコストを負担すべきだということが、国民の共通認識となるよう議論を進めていかなければなりません。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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