大学の教育・入試、変化は意外に早い? 組織運営の見直しが急務

これまで当コーナーでは、国立大学の再編や、それに伴う入試について、徐々に大きく変わっていきそうな動きを紹介してきました。国立大学の場合、その背景に文部科学省の意向があることはいうまでもありません。ただ、大学の組織運営や、それに伴う教育・入試の見直しが急速に進んでいることは、国立に限ったことではないといえます。昨年6月の法改正により、今年4月から、国公私を問わず大学に「ガバナンス(組織統治)改革」が求められることになったからです。文科省がその見直し状況を調べたところ、既に約98%の大学が、内部規則を改正するなどの具体的な取り組みを済ませたといいます。これにより伝統的な「大学」の姿も、急速に変わっていくかもしれません。

従来、大学の運営といえば、教授会による自治が中心でした。欧米の大学の歴史的な伝統を引き継いだというだけでなく、憲法で保障された「学問の自由」を守るとりでともなってきました。反面、大学全体として、社会の変化に対応する機動的な意思決定がされにくかったことも否定できません。
私立大学にはもともと理事会があり、国公立大学に関しても2004(平成16)年の法人化により、学長のリーダーシップに基づく経営面での改革が進めやすくなりました。そうした大学ガバナンス改革を、教学面も含めてさらに進めようとしたのが、昨年6月の法改正だったのです。背景には、グローバル化と大学間の国際競争の激化、経済界をはじめとした社会の期待の変化がありました。

その中で大きな問題になったのが、教育内容の改革でした。学問体系を基本とした学部に基づく教授会自治が、社会の変化に機動的に対応する教学の改革を遅らせてきた面があるのではないかとの指摘が、中央教育審議会などの関係者から挙がりました。そこで国公私立を問わず、教授会の役割を事実上制限する一方、学長が責任を持って改革を推進できる体制を法的に整備したわけです。
こうした改革が、単に大学関係者の内輪の話にとどまらず、学生や進学希望者にとっても大きな影響を及ぼすものであることは、先の記事が示しています。そして、ほとんどの大学で法律に基づき、内部規則も見直しが済んでいるということは、今後、各大学の改革が加速度的に進んでいく可能性が高いことを示しているのです。

この10年ほどの間でも大きな変化があったのですから、保護者のかたの学生時代にあった大学も、当時のままとは限りません。また、近年の評判がずっと続くとも限りません。18歳人口が再び急減期に入る「2018年問題」を控えて、各大学は生き残りをかけて改革にしのぎを削っています。大学の評判を左右するのは何といっても卒業生の評価ですから、各大学とも教育に力を入れようと、カリキュラム改革に必死です。

大学入試改革という入り口に、どうしても目を奪われがちですが、現在の教育改革では、入試改革と、入学後の大学教育の改革、さらには入学前の高校教育の改革がセットになっています。このことを、くれぐれも忘れてはならないでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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