「チーム学校」提案も……実現には厳しい道のり

教員が何でもこなしてきた学校組織を、専門家集団による「チーム学校」に変えるべきだという提言を、中央教育審議会の作業部会がまとめました。専門スタッフが力を発揮すべき仕事は任せ、「世界一忙しい」と言われる教員が「子どもに向き合う時間」を増やすことで、学校全体をチームとして教育力を向上させるのがねらいです。ただ、その実現には相当な困難も予想されます。

「チーム学校」は、昨年7月の下村博文・文部科学相からの諮問(外部のPDFにリンク)を受け、中教審で検討してきたものです。管理職(校長・副校長・教頭)の資質・能力向上や、「中間管理職」ともいうべき主幹教諭制度の充実、事務職員の役割発揮など、従来の教職員にがんばってもらうことはもとより、心理の専門家であるスクールカウンセラー(SC)や福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカー(SSW)を巡回ではなく学校に常置する職にすることを目指すとともに、部活動の指導や引率を顧問教諭の同行なしに一人で行える「部活動支援員」(仮称)を新設することも提言しています。とりわけ部活動は中高の教員にとって、土日の大会引率も含め多忙化の最大要因になっていると指摘されていますから、学校現場にとっては朗報でしょう。

現在、改訂が検討されている次期学習指導要領では、アクティブ・ラーニング(課題発見・解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習、AL)の導入をはじめとした「授業革新」が求められます。教員が授業に専念できる体制づくりは、その前提条件だと言っても過言ではないでしょう。
しかし、それには専門スタッフの数も増やさなければなりません。SCやSSWは現在、非常勤であることが多いのですが、学校の「標準的な職」にするとなれば、常勤職とする必要が出てきます。専門家であるだけに、一般公務員よりも給与が優遇されなければならないとされる教員と、少なくとも同等か、それ以上の高給に設定しなければ本来の職務と見合いません。部活動支援員も、事故などの責任問題を考えると、単なるボランティアで済むものではないでしょう。いずれもコストを掛けなければ、とても「チーム学校」を目指す体制にはなりません。

一方で財務省側からは、少子化に合わせて教職員の数を減らす計画を立てるべきだという提案さえ出されています。来年度の予算編成に向けては、教職員の数自体を増やすか減らすかという攻防の中で、新しい専門スタッフ職を増やせるかどうかという、難しい折衝を文科省は迫られることになります。

中間まとめは、パブリックコメント(意見公募手続)にかけられます。現下の教育を改善するため、どのような学校の在り方が必要なのか。保護者としても納税者としても、目が離せません。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

お子さまに関するお悩みを持つ
保護者のかたへ

  • がんばっているのに成績が伸びない
  • 反抗期の子どもの接し方に悩んでいる
  • 自発的に勉強をやってくれない

このようなお悩みを持つ保護者のかたは多いのではないでしょうか?

\そんな保護者のかたにおすすめなのが/
まなびの手帳ロゴ ベネッセ教育情報サイト公式アプリ 教育情報まなびの手帳

お子さまの年齢、地域、時期別に最適な教育情報を配信しています!

そのほかにも、学習タイプ診断や無料動画など、アプリ限定のサービスが満載です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

子育て・教育Q&A