今の高2は在学中に参院選投票! 文科省が「主権者教育」急ぐ

選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げる公職選挙法改正に対応して、文部科学省が高校での「主権者教育」の準備を急いでいます。来夏に行われる参議院議員選挙で、今年度の高校3年生(来年度は卒業)は全員、2年生(同3年生)は18歳になった生徒から、投票権を得ることになるからです。これまで高校生の政治的活動を学校内外で禁止してきた通達を46年ぶりに見直すとともに、模擬投票など実践的な主権者教育を行ってもらうための副教材を今夏中にも配布したい考えです。また、こうした当面の対応だけでなく、検討を進めている学習指導要領の全面改訂(高校は2022<平成34>年度入学生から実施)で、「公共」といった科目の新設を検討し、若者の社会参加のための学習を本格化させたい考えです。

18歳選挙権については、当コーナーの過去記事でも紹介してきたように、憲法改正手続きを定めた憲法改正国民投票法とセットで出てきた話です。現在でも年代別に見ると20歳代の投票率が最も低く、国際比較調査でも「私の参加により、変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない」と考える高校生が米国・中国・韓国に比べ際立って少ないなど、若者の政治参加意識に課題(外部のPDFにリンク)が指摘されていました。一方で少子・高齢化に伴う年金・福祉などの問題は若者の一生に直結する課題であり、むしろ若者自身に判断を求めるべきだという意見は、憲法改正論議を別にして、多くの国会議員の賛同を得るところとなりました。そこで与野党6党が共同で選挙権年齢を引き下げる法案の提出に至ったものです。

教育は本来、「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた」(教育基本法第1条)国民の育成を目指し、高校の公民科(外部のPDFにリンクでも当然「平和で民主的な国家・社会の有為な形成者として必要な公民としての資質を養う」ことを目標にしているのですが、実態は知識を覚えることにとどまっており、実際の意識や投票行動などに結び付いていないことが多いのは、先に見たとおりです。

一部の高校などでは、NPOなどの支援も得て模擬投票を実施するところも少しずつ増えてきていますが、今や実際の投票を控えた高校生にとって、主権者教育は喫緊の課題になっています。そこで文科省は選挙を所管する総務省と協力して、副教材作りを急ぐことにしました。今後、各高校で今年度中にどのような教育活動を行うか、急速に検討と実施が進められることでしょう。
次期指導要領をめぐっても、昨年11月の諮問に基づいて、中央教育審議会の部会で新科目の検討が進められています。専門家や専門機関の協力を得ながら、討論や模擬投票、模擬裁判など実践的な学習活動を通じて、主体的に選択・判断し、他者と協働しながら課題を解決していく力を育みたい考えです。

こうした教育は本来、18歳選挙権の問題にかかわらず、高校で行われていなければならなかったことだと言えるでしょう。主権者教育に限らず、社会に参加・活躍できる力を十分に付けさせることを、高校教育にはますます期待したいものです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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