コミュニティ・スクール、「応援団」化も? 「必置」検討で

以前の記事で、政府の教育再生実行会議が「全て学校」を「コミュニティ・スクール」(CS)化するよう提言したことを紹介しました。その後、下村博文文部科学相が中央教育審議会に検討を諮問(外部のPDFにリンク)し、中教審では作業部会などを設けて具体的な審議を始めています。ただ、全校に現行法どおり「学校運営協議会」を設置し、教員人事に至るまで意見を述べるというのは、少し荷が重いのも確かです。そのため現実的な道を探る可能性もあるようです。

作業部会の初会合では、金子郁容・慶応義塾大学教授が意見表明を行いました。CSは2000(平成12)年12月に「教育改革国民会議」報告で導入が提案され実現したものですが、元々のアイデアを出したのが同会議委員だった金子教授でした。当時、信頼される学校作りや教育分野の規制緩和を進めるため米国の公設民営学校「チャーター・スクール」制度を導入すべきだという意見もあったのに対して、自由な学校が作れる一方で成果が上がらなければ廃校もあり得るというのは日本になじまないということで、代案として英国の制度を参考にしたのがCSでした。

法制化されたCSは、学校運営協議会に保護者や地域住民などを加え、学校運営の基本方針を承認したり、教育活動などについて意見を述べたりするほか、教職員の任用に関して教育委員会に意見を述べることができ、教委もその意見を可能な限り尊重しなければなりません。理想の学校を作るためには、それを担える優秀な教職員も必要になるとの考えからでした。
しかし実際のCSには、制度の趣旨どおりに人事も含めて積極的に学校運営にモノ申すタイプと、そうした機能にあまり重きを置かない「学校応援団」タイプがあるといいます。多くの学校をCSに指定している京都市の門川大作市長(元同市教育長)は、同市のCSは学校応援団の典型だとしています。

金子教授は国民会議の当時、むしろ人事権を盛り込むよう積極的に主張していたといいますが、作業部会ではそうした立場を変え、CSを必置とする代わりに「市町村教育委員会に意見を述べることができる」といった規定にとどめるとともに、人事に関する意見を述べられるとした条文を削除することを提案しました。CSの「生みの親」の発言だけに、重いものがありそうです。
文部科学省の協力者会議が「学校支援地域本部」などを発展させる形でCSの設置を促進するよう提言したことは、既に紹介しました。CSの「学校応援団」化も、そうした流れに合うものだと言えるでしょう。

今の学校は教育活動を行うにも地域の協力が欠かせませんし、地域にとってもその活性化には学校の存在が不可欠です。CSは、両者が連携するツールとしての役割に期待が高まっていると言えそうです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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