厳しい教員就職への道のり……大学院まで必要!?

受験シーズンまっただ中。中には教員を志望して教員養成学部(教育学部)を受けたお子さんもおられるでしょう。文部科学省は毎年、国立の教員養成大学・学部などの就職状況をまとめており、このほど2014(平成26)年3月卒業者の結果がまとまりました(9月末現在)。国立の学部卒の教員就職率は平均60.4%(前年度比0.9ポイント減)ですが、一方で94.1%(同1.1ポイント増)と好調なのが国私立の「教職大学院」です。

まず学部段階の44大学について見ると、卒業者1万709人のうち、教員になれたのは6,465人。ただし正規採用は3,813人、臨時的任用は2,652人と、新卒ですぐ正規採用になるのは教員就職者のうち6割程度。卒業者全体の3人に1人程度にすぎません。都道府県によって事情は相当違いますが、国立の教育学部といっても決して安泰ではないのです。2014(平成26)年度の公立学校教員採用試験を見ても競争率は全体で5.7倍(同0.1ポイント減)、小学校でも4.1倍(同0.2ポイント減)と、少し下がったとはいえ正規採用されるまでには非常勤講師(臨時的任用)になるなどして何年も採用試験を受け続けることが普通になっています。そうした厳しい現実も知っておく必要があるでしょう。
一方で教職大学院の修了者のうち、学部卒業後に直接進学した「ストレートマスター」(ほかに現職教員学生も在籍)について見ると、初の修了者を出した2010(平成22)年度から90.0%に達して以降、教員就職率は年々高まっています。もちろん臨時的任用も少なくありませんが、2014(平成26)年3月修了者では教員就職者401人中、正規採用は296人と7割を超えています。やはり学部卒と比べて教員就職率、わけても正規採用の割合が高いことは歴然です。

教職大学院制度が導入される時、多様な人材を教員に招くための「参入障壁になってはいけない」という規制緩和論からの批判もあって、別枠で募集するなど採用試験で修了者を優遇してはいけないことになりました。しかし結果的には、教育委員会や学校と連携しながら学んできた修了者の資質・能力の高さが「即戦力」として採用にもつながっていることは事実のようです。ただ、それも学部プラス2年間の時間と学費という高負担の末だということは、言うまでもありません。
もちろん、学部卒ではだめだと言うわけではありません。しかし昔に比べて教員に対する目が厳しくなっているのは事実で、教壇に立った以上その日から一人前の「先生」であることが要求される雰囲気が社会で強まっていることも否定できないでしょう。学部段階でも実践的指導力を身に付けさせる教育を強化していますが、免許状の取得や学校支援ボランティア、教員採用試験の勉強にと追われる毎日です。晴れて採用されても一生、勉強が終わることがないのは、どんなルートであっても同じです。

それだけの苦労をしても、教職はやりがいのある仕事だと多くの教員が思っています。だからこそ、教員になるには相当の「覚悟」が必要になっています。一般学部の教職課程を経て教員になろうという人には、なおさらです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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