「飛び入学」の大学生に高卒認定 「中卒」リスク回避へ-渡辺敦司-

小中一貫教育制度について提言した中央教育審議会の答申(外部のPDFにリンク)では、小中一貫教育学校(仮称)の創設などのほか、高校から大学への「飛び入学」について、「高等学校の卒業程度認定制度」を創設することも提言しました。飛び入学をしても大学を中退したら学歴が中卒になってしまう問題があることは、以前の記事でも紹介しました。飛び入学の高卒認定が制度化されることで、飛び入学に対する抵抗感が少し和らぎそうです。

答申にもあるとおり、飛び入学者は現行制度上、高校を中退して大学に入学することになっています。もともと飛び入学は、一刻も早く大学に進学させなければ才能が損なわれてしまうような「稀有(けう)な才能を有するごく少数の者」を対象とした「教育上の例外措置」(答申 第4章)として構想されたものであり、入学後も特別な手厚い教育を行うことが前提とされたため、中退するといった事態は想定していませんでした。しかし、飛び入学が制度化されて15年がたち、対象分野が広がっても、いまだに導入がごく一部の大学にとどまっていることから、政府の教育再生実行会議は第5次提言(外部のPDFにリンク)で、高校の「早期卒業制度」の導入を提言していました。
ただ、日本の高校は、学力だけを身に付けさせるところではありません。答申が指摘するように、「心身の発達等に応じた教育を施すとともに、豊かな人間性や創造性、健やかな身体を養い、国家及び社会の形成者として必要な資質を養う」などの重要な役割を担っています。制度論としては、一部の能力に秀でていることをもって「卒業」まで認定することには無理がありました。

そこで浮上したのが「卒業程度」の認定です。答申では、高校で50単位以上、大学で16単位以上を修得し、かつ、それぞれの単位が特定分野に著しく偏っていないことを確認し、文部科学相が「高等学校を卒業した者と同等以上の学力を有する」と認定することにしています。「高卒程度」の認定は、高等学校卒業程度認定試験(旧大検)と同様だと考えればよいでしょう。あくまで高校「卒業」とはなりませんが、ほかの大学や資格検定を受ける際にはまったく支障はありませんし、就職の場合も多くの企業では高卒扱いとなるはずです。
中教審での検討に際して文科省は数学オリンピック出場者等にアンケートしたとしていますが、私はたまたまその時の数学オリンピック財団主催の夏季セミナーを取材していました。そこには、高校では同級生と数学の話がまったく合わないような飛び抜けて才気あふれる生徒たちが1週間、全国の数学好きの仲間と寝食を共にしながら数学漬けの生活を送ることで、口々に「幸せだ」と語っていたのが印象的でした。

「新たなイノベーションを創出し、国際的に活躍できる人材の育成」(答申)はもとより、稀有な才能を持つ生徒のためにも、飛び入学制度が広がることは望ましいことでしょう。もちろん、高校3年間を満喫したいという意思を尊重することも重要です。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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