本を読まない16~19歳が減少 読書指導が奏功?‐渡辺敦司‐

今年も読書週間が始まりました(11月9日まで)。ところで文化庁の「国語に関する世論調査」(16歳以上が対象)といえば毎年、言葉遣いや慣用句の使い方が話題になりますが、今回(2013<平成25>年度調査)(外部のPDFにリンク)は読書に関しても尋ねているのが特徴です。過去の調査(02<同14>年・08<同20>年)と比べ、注目すべき変化が見られました。

1か月に本を1冊も「読まない」と回答したのは全年代の平均で47.5%。2008(平成20)年度に比べると1.4ポイント増ですが、02(同14)年度に比べると10ポイント近く増えています。読書量が減っている理由として最も多いのは相変わらず「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」(2008<平成20>年度51.2%、13<同25>年度51.3%)ですが、「情報機器で時間が取られる」が08(平成20)年度の14.8%から13(同25)年度は26.3%に上昇しています。2002(平成14)年度はこの質問をしていませんが、当時は今ほど情報機器が普及していなかったことを考えれば、やはりパソコンや情報端末としての携帯電話(ケータイ)が紙の本に取って代わったことがうかがえます。
年代別に見ると、20代から50代まで本を読まない人が2008(平成20)年度に比べ増えているのに対し、16~19歳は4.5ポイント減の42.7%となっています。2002(平成14)年度(34.8%)の水準まで回復していないとはいえ、本を1冊も読まない子どもが減ってきたのは事実でしょう。
2002(平成14)年といえば、1998~99(平成10~11)年に告示された学習指導要領の全面実施(小中学校は02<同14>年度から、高校は03<同15>年度入学生から)を控えていわゆる「ゆとり教育批判」が巻き起こった事態に応えようと、当時の遠山敦子文部科学相が「学びのすすめ」(外部のPDFにリンク)と題するアピールを出し、今につながる学力向上路線を打ち出した年です。その一環として朝読書などの活動を取り入れる学校も全国に広がっていきましたが、2008(平成20)年度の段階ではケータイの急速な普及も相まって、読書離れに歯止めを掛けることまではできなかったようです。

それが今回ようやく本を読まない10代が減ったのは、どうしてでしょうか。考えられる変化としては、学校での「言語活動の充実」が挙げられます。「生徒の学習到達度調査」(PISA)で読解力が2000(平成12)年の8位から03(同15)年は14位に落ちたことから日本でも「PISAショック」が起こり、文部科学省は読解力向上の取り組みを進めてきました。その延長で現行の学習指導要領(2008~09<平成20~21>年告示、全面実施は11~13<同23~25>年度)には全教科等で「言語活動」を充実することが盛り込まれ、読書も言語活動の基盤になるものとして各学校で指導の充実が行われました。2007(平成19)年度から始まった全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で、よく本を読む子どもほど正答率も高くなる傾向が明らかになったことも弾みになったようです。
2008(平成20)年に比べてもケータイがますます普及したにもかかわらず、本を読まない10代が減ったのは、そうした学校での取り組みが功を奏したと見てよいのではないでしょうか。

調査によると、「人が最も読書すべき時期」として「10歳代」を挙げた人が44.8%(2008<平成20>年調査比4.8ポイント増)を占めています。学力向上だけでなく、人生にとっても実りの多い読書の秋としたいものです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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