これからの授業はICTで「授業革新」-渡辺敦司-

ほぼ10年に一度の見直しが行われている学習指導要領について、今秋にも中央教育審議会に改訂が諮問される予定です。一足早く教科化される道徳教育はもとより、小学校での教科化など英語教育の改革、伝統文化や領土教育の充実、高校での日本史必修化や新科目「公共」など検討課題(外部のPDFにリンク)は目白押しですが、全体を貫く方針として、学習内容中心(何を知っているか)から「資質・能力」(何ができるか)へのシフトを図る(外部のPDFにリンク)ことが目指される見通しです。それには授業の在り方を大きく変える必要があり、ICT(情報通信技術)の活用も不可欠だと言います。キーワードは「授業革新」です。

政府の教育再生実行会議は7月にまとめた第5次提言(外部のPDFにリンク)の中で「課題解決・双方向型授業」の必要性に言及し、提言を受けて下村博文文部科学相が中教審に諮問した理由説明では「これからの教育を担う教員には、例えば、子供たちが一方的に教えられる受け身の授業ではなく、ICT等も活用しながら、課題の解決に向けて主体的・協働的に学ぶ授業を通じて、これからの時代に求められる力を子供たちに確実に身に付けさせることができる指導力が必要です」としていました。この諮問では「チームとしての学校」(チーム学校)の在り方も検討課題となっていますが、そのもとになった同省の有識者会議では「課題解決型・双方向授業の実現(授業革新)」という表現を使っています。
代表的な国際学力調査PISA(経済協力開発機構=OECD=の「生徒の学習到達度調査」)や全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のB問題に見られるとおり、これからの時代には知識をたくさん覚えることよりも、知識を活用する力がますます重要になってきます。現行の指導要領の下でも「言語活動の充実」(外部のPDFにリンク)といった形で、活用力を育成する授業が各教科等で進められています。今回の「授業革新」は、そうした方向をさらに進めようとするものです。2011(平成23)年に同省がまとめた「教育の情報化ビジョン」(外部のPDFにリンク)にあるとおり、ICTを使うことによって、一斉授業や個別学習だけでなく「協働学習」の可能性が広がります。

同省がまとめた最新の実態調査(外部のPDFにリンク)によると、「授業中にICTを活用して指導する能力」のある教員の割合は着実に増え、69.4%に達しています。ただし「児童のICT活用を指導する能力」は64.5%と低めです。また、6月に発表されたOECDの国際教員指導環境調査(TALIS)(外部のPDFにリンク)でも、日本の教員は主体的な学びを引き出すことに対しての自信が低く、ICT活用等の実施割合も低いことが浮き彫りになりましたが、研修を受けたくても多忙などのため受けられないという実態もわかっています。
今後求められる授業革新を進めるためには、学校でのICT環境整備、それを使いこなせる教員の研修と授業研究、児童生徒同士の話し合いや発表などの活動を充実させるための授業時間の確保などが課題になります。21世紀を生きる能力を子どもたちに付けさせるためにも、国を挙げて本気で取り組まなければならないと言えるでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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