改めて期待される地方私大の役割 今春、地元志向の高まりで‐渡辺敦司‐
日本私立学校振興・共済事業団が、2014(平成26)年度の「私立大学・短期大学等入学志願動向」(外部のPDFにリンク)調査の結果を発表しました。いわゆる「大学全入時代」を迎えて私立大学の多くは定員割れなど苦境に置かれていることも少なくありませんが、長引いていた不況の影響もあって、地元私大への人気も高まっているようです。どの地域に住んでいても高等教育を受ける機会が得られる地方私大の役割が、改めて注目されます。
調査によると、私立大学578校の今年度の入学定員は約46万人で、それに対して約346万4,000人(前年度より約7万4,000人<2.2%>増)が志願しました。実際に受験したのは約333万人ですが、合格者の約119万6,000人は前年度を4万9,000人近く上回る数字です。もっとも入学者は約47万8,000人と、6,000人余り減りました。入学定員充足率が100%を下回る「定員割れ」だったのは265校(前年度比33校増)で、全体の45.8%(同5.5ポイント増)と半数に迫る勢いとなり、大学側にとっては厳しい環境となっています。
充足率を大学の規模別に見ると、入学定員3,000人以上のマンモス大学で108.96%と前年度に比べ0.18ポイント微増した一方、それ以下の規模では、1,500人以上3,000人未満の大学が109.60%(前年度比1.82ポイント減)、1,000人以上1,500人未満が107.05%(同3.05ポイント減)など、軒並み充足率を落としています。一定規模を持つ大学でさえ油断はできないことを示す結果と言えそうです。
ただし志願倍率を見ると、上昇したのは入学定員が「800人以上1,000人未満」「1,000人以上1,500人未満」「1,500人以上3,000人未満」の一定規模を持つ大学と、「100人未満」「100人以上200人未満」「300人以上400人未満」といった小規模大学でした。
志願倍率を地域別に見ると、「東京」が0.06ポイント減の9.69倍、「福岡」が0.04ポイント減の6.20倍となる一方、「愛知」は0.26ポイント増の7.56倍、「京都」は0.23ポイント増の9.27倍、「大阪」が0.57ポイント増の8.95倍となっただけでなく、北海道、東北、埼玉、千葉、北陸、東海、近畿、中国、福岡を除く九州でも志願倍率が上昇しており、受験に際しては地元志向の高まりが見て取れます。
これには先の記事でも紹介されたとおり、新課程に移行した来年度以降の受験生との競争を避けるため今年度のうちに確実に合格しておきたいという受験生心理が働いたこととともに、負担が安くて済む地元大学への志向が高まったという側面もあるでしょう。いずれにしても、受け皿としての地方私大の役割が注目されたと見ることができます。
同日に発表された文部科学省の学校基本調査でも、大学進学率はもとより専門学校を含めた高等教育進学率も上昇したことが明らかになっています。高卒就職市場が縮小する中、やはり上級学校で教育を受けて実力をつけることが、ますます不可欠になっています。文科省も地域の高等教育機関同士が連携することを進めており、地域にも一定数の大学が必要であるという視点も忘れてはなりません。