親子関係が良好に 自分に自信がある小・中学生も増える-渡辺敦司-

夏休み真っ盛り。お盆に入り、保護者の仕事も休みになると、さらに親子の会話が弾むことでしょう。実際に、そんな家庭が増えているようなのです。内閣府の調査によると、以前に比べ親子関係が良好になっており、自分に自信を持つ子どもも増えているというのです。

調査は2014(平成26)年2月に実施し、小学校高学年と中学生の親子約4,000人から回答を得ました。子どもの回答によると、家族でおしゃべりをすることが「よくある」との回答は86.8%で、8年前の前回調査(2006<平成18>年3月実施)に比べ9.3ポイント増えました。家族で買い物や食事に出かけることも16.5ポイント増の53.2%に。家族と社会の出来事について話すことは4.4ポイント増の24.2%ですが、「ときどきある」を含めれば74.7%を占めています。
そうした会話や行動の良好な変化を反映してか、前回は3人に1人を占めていた「お父さんに、反発を感じる」「お母さんに、反発を感じる」と回答した子どもは減少して、いずれも約27%と5人に1人ほどになっています。「お父さんは、頼りになる」は5.3ポイント増の90.9%、「お母さんは、頼りになる」は6.0ポイント増の93.5%で、同様に「自分の気持ちをわかってくれる」との回答は父親で82.1%(前回調査比15.0ポイント増)、母親で90.4%(同8.2ポイント増)と、保護者に対する信頼感が増していることがわかります。
良好になっているのは、親子関係だけではありません。先生とも、友達とも「関係がうまくいっている」との回答が、前回より増えています。学校生活についても楽しさの度合いが増しており、「人の役に立つ人間になりたい」「勇気のある人間になりたい」「将来のためにも、今、頑張りたい」と強く思う子どもも増えており、前向きになっている様子がうかがえます。

これまでも当コーナーでたびたび取り上げてきたように、日本の子どもが国際的に見て自己肯定感が低いことは各種調査で明らかになっており、下村博文文部科学相(外部のPDFにリンク)も「我が国の危機的状況」の一つに挙げているほどです。ただし今回の調査では、「自分に自信がある」との回答が11.4ポイント増の49.9%と2人に1人を占めるまでになりました。少なくとも最近の子どもの気持ちの中では、良好な人間関係を反映して、自己肯定感が高まっているようです。
「気持ちの中では」と書いたのは、回答とはうらはらに、実際のところはどうなのか、少し不安に感じるからです。友達付き合いに関して「何でも話せる友達がいる」との回答は5.8ポイント増の90.2%、「気の合わない人とも、話をすることができる」も4.5ポイント増の46.4%に増えていますが、その友達関係が「つながり依存」というような不安を背景にしている場合があることも、以前に紹介しました。せっかく増えた親子の会話ですから、言葉の裏にある子どもの気持ちまで深く理解する機会となるよう、この夏休みを有効に活用したいものです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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