入試改革は必要だけど……「達成度テスト」には賛否 ベネッセ調査 ‐渡辺敦司‐

政府の教育再生実行会議や文部科学省の中央教育審議会で論議されている大学入試改革について、ベネッセ教育総合研究所は1月23日、「高大接続に関する調査」の結果(速報)を発表しました。高校・大学とも入試制度改革の必要性は感じているのですが、現行の1点刻みの大学入試センター試験を改めて「達成度テスト(仮称)」を設けることには両者で賛否傾向が異なり、高校では反対が多くなっています。とはいえ「どちらともいえない」という回答も多く、同研究所では「入試制度改革で解決をめざす課題は何なのか、そのための施策の意義を高校・大学の双方に分かりやすく説明し、広く理解を促す必要がある」、入試改革は「高校教育の改革、大学教育の改革と合わせて」「総合的な視点にたつ改革が不可欠」と指摘しています。

調査は、中教審の臨時委員も務める川嶋太津夫・大阪大学教授を主査に迎えて企画し、2013(平成25)年11~12月に郵送で実施。高校の校長1,228人(回収率49.1%)、大学の学科長2,015人(同39.8%)から回答を得ました。「共通入試を基礎とした上で各大学が多面的な評価を加えて実施する入学者選抜」についての賛否を尋ねたところ、賛成(「どちらかといえば」を含む)が高校の63.0%、大学の60.7%と、双方とも何らかの入試改革が必要だという認識では一致しているようです。

ただ、「現在のセンター試験の廃止」には高校で賛成19.6%、反対41.6%と反対が多く(大学では各26.8%、28.8%と賛否が伯仲)、とりわけ「国公立大学や難関私立大学への進学者が多い」高校では反対が51.7%と半数を超えています。実行会議の第4次提言(外部のPDFにリンク)(2013<平成25>年10月)が提唱した基礎・発展の二つのレベルによる「達成度テスト(仮称)」創設についても、大学で賛成の比率が高い(賛成37.4%、反対24.9%)のに対して、高校では反対の比率が高くなっています(各27.2%、41.4%)。自由記述を見ると、「センター試験と何が違うのか」「なぜセンター試験を廃止する必要があるのか」など、現行のセンター試験を中心とした入試体制がうまく機能していることを評価しつつ、提案されている改革案がなぜ必要なのか理解に苦しんでいる様子が見て取れます。もっとも改革案についての理解が進んでいないのは大学側も同じで、高校・大学ともに各項目で「どちらともいえない」が3~4割と多いことに、それが表れています。
実行会議は改革の方向性の大枠を示しただけで、二つの達成度テストをどのようなものにするかは、これから中教審で検討する課題です。逆に言えば、高校と大学の関係者が英知を結集して制度設計をしていく余地がまだあるということでもあります。

これまでにも紹介してきたように、今回の改革論議は大学入試だけを取り上げたものではなく、高校教育や大学教育の改革と一体で行わなければならないという認識があり、特に大学側から提起されたことに注意する必要があるでしょう。それだけに、「高校にとって何が重要な課題なのかが分かりづらい」(71.7%)という回答が多いのが気になります。今後、中教審での論議が深まり、学校現場にも理解が広がることが期待されます。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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