「学校週6日制」なぜ復活!? -渡辺敦司-

下村博文文部科学相は、公立学校で毎週土曜日を休みとする「学校週5日制」を見直して「学校週6日制」を実現するための具体的な検討に着手したことを明らかにしました。しかも、既に「土曜授業」の実現は自民党の政権公約に入っており、第1次安倍内閣の時の教育再生会議でも提言(外部のPDFにリンク)されていたことから、改めて是非を審議し直す話ではないと説明しています。文部科学省内での準備が整えば、土曜日にも正規の授業ができる学校週6日制が全国的に広がるのは、そう遠くない話になりそうです。

保護者の皆さんの中には、「毎週土曜日が授業だったなんて想像がつかない」というかたもいらっしゃるでしょう。月1回の5日制(第2土曜日が休み)が全国一斉に始まったのは、いま27歳の人が小学1年生だった1992(平成4)年の2学期(9月)のことです。それが月2回(第2・4土曜日休み)になったのは、3年後の95(平成7)年4月。それから7年を経て、前の学習指導要領が小・中学校で全面的に実施となった2002(平成14)年度から、高校なども含めた全公立学校で、毎週土曜日休みの「完全学校週5日制」に移行したのでした。
実は、この指導要領が全面実施に入る直前の2000(平成12)年ごろから「学力低下論争」「ゆとり教育批判」が巻き起こり、それを受けて文科省は5日制を見直さなかったものの、指導要領で定める授業時間数の「標準」を超えて授業を行ってもよいという姿勢を明確に打ち出しました。さらに新しい指導要領では中学校で週1コマ分増えるなど標準時数が増やされたのですが、実際にはそれ以前から標準時数を超えて授業をしていた学校が多かったため、おそらく急に授業時間が増えたという感覚はそれほどなかったかと思います。

ただ新しい指導要領では、前の指導要領の時に削減された学習内容が一部復活しただけでなく、各教科に「活用」の学習活動が採り入れられるなどして授業内容が濃くなり、教科書も厚くなりました。標準時数を増やしたのも、そうした授業に対応したものだと文科省は説明しているのですが、その分「平日がきつくなった」というのが、子どもたちや先生方の正直な実感でしょう。
既に紹介したように、東京都を皮切りに、土曜日の正規授業を一部認める自治体は少しずつ広がってきています。保護者にも土曜授業に賛成する意見が多くあることも紹介しました。「世界トップレベルの学力」は安倍内閣が掲げる方針であり、そのためには授業時数を増やすことが不可欠だといいます。月2回程度の実施ということであれば、文科省が制度改正をすれば、あっという間に全国に広がるかもしれません。

ただ、保護者にとっては土曜日に子どもを送り出す負担も復活することは確かです。子どもや家庭、仕事をめぐる環境も、地域によって違います。保護者を含めた関係者の同意も得て、各地の実態に合った授業ができ、しかも子どもに「確かな学力」がつくようなバランスの取れた時数が設定できるよう、柔軟な制度づくりが望まれます。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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