学校体育も変わる? 「スポーツ基本法」

10月10日は「体育の日」でした。皆さんも、親子で体を動かしたでしょうか? ご存じの通り体育の日は、1964(昭和39)年に開かれた東京オリンピック(10月10日が開会式)を記念して、2年後の66(同41)年、祝日に加えられました(現在は10月第2月曜日)。ところで今年は、そんな体育・スポーツの歴史にとっても、節目の年になったことをご存じでしょうか。「スポーツ基本法」の制定です。

スポーツに関する総合的な法律は、これまでにも、東京五輪を控えた1961(昭和36)年に制定された「スポーツ振興法」がありました。しかし、制定当時は五輪もアマチュアリズムの時代で、プロスポーツまで想定したものではありませんでした(後の改正で追加)。また、パラリンピックに代表される障害者スポーツは厚生労働省の所管であるなど、必ずしも国として、統一的なスポーツ振興政策が推進されているとは言い難い状況にありました。
そこで「振興法」制定50周年に向けて、同法を全面改正した「基本法」制定の機運が盛り上がり、超党派による議員立法という形で、今年6月に可決・成立しました(施行は8月24日)。9月22日には、新法に基づく「スポーツ基本計画」(旧「スポーツ振興基本計画」)を策定するため、中川正春文部科学相が中央教育審議会に対して、どのような内容にすべきかを諮問しています。

では、新しい法律で、何が変わるというのでしょうか。いま話題のサッカー日本女子代表「なでしこジャパン」を例に考えてみましょう。ニュースなどで注目された通り、選手たちはワールドカップで優勝するまで、プロのクラブチームに所属していても、決して経済的に恵まれた環境にあるとは言えませんでした。また、決勝戦を戦った米国に比べると、女子サッカーの競技人口のすそ野の広さには、圧倒的な違いがありました。これは、日本のスポーツ競技が長く、学校と企業に支えられてきた≪ひずみ≫とも言えるものです。
そこで基本法では、「国家戦略」としてスポーツ立国の実現を目指し、総合的・計画的な推進を目指しています。最近、各地に整備されている「地域スポーツクラブ」も、法律に明記されました。学校・企業に依存し過ぎてきたスポーツ振興が、地域スポーツクラブ、競技団体、スポーツ産業、学校、行政といった関係者の連携によって推進されるべきだという方向性が、いっそう明確になったといえます。

その一方で、「学校における体育の充実」も、条文に盛り込まれました。指導の充実やスポーツ施設の整備はもとより、地域スポーツ指導者も活用すべきだとしています。学校の先生が主な指導者だった部活動の在り方も、大きく変わりそうです。
基本法の前文には、「スポーツは、世界共通の人類の文化である」とうたっています。子どもの体力・運動能力の低下が指摘されるなか、体育の日だけでなく、スポーツに対する関心を高めたいものです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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