≪超優秀≫な受験生に限定!? 阪大「挑戦枠」「AO」の背景

大阪大学が2013(平成25)年度から導入する新しい入試方法が、ちょっとした話題を集めています。理学部で「挑戦枠」と「研究奨励AO入試」を設けるとともに、工学部・基礎工学部と合同で「国際科学オリンピックAO入試」を行うといいます。しかも、こうした入試は、阪大にとどまらず、他大学にも広がっていくことが予想されます。どういうことでしょうか。

そのためにも、阪大の新しい入試方法を、詳しく見ていきましょう。「挑戦枠」(募集人員は4学科で計37人以内)は、前期日程で、「一般枠」(同202人)と別に行います。日程は2日間で、初日に一般枠と同じく数学・理科・外国語(試験時間は各90~150分)を課したあと、2日目には志望学科に応じて「専門数学」「専門理科〔物理〕」「専門理科〔化学〕」のいずれかが出題されます(同180分)。阪大理学部では、挑戦枠を設ける趣旨を「与えられた知識を吸収することだけに満足せず、自分自身の頭脳でどこまでも粘り強く考察して真理を探究・発信することを熱望する人を受け入れるため」と説明しています。単なる「試験対策」では、とても通用しそうにありません。
一方、やはり理学部の「研究奨励AO入試」(同16人)は、数学や科学分野で優れた自由研究を行った者が、出願対象です。といっても、(1)スーパーサイエンスハイスクール(SSH)(外部のPDFにリンク)生徒研究発表会の出場者(2)日本学生科学賞の入選者と最終審査会進出者(3)ジャパン・サイエンス&エンジニアリング・チャレンジ(JSEC)「高校生≪科学技術≫チャレンジ」の最終審査会出場者……に限定(出場予定者を含む)。しかも書類選考を通った者には口頭試問が課されるといいますから、相当なハードルです。

また、理学部物理学科では以前から「国際物理オリンピック入試」を実施していましたが、工学部と基礎工学部も加えた全14学科に対象を拡大して、「国際科学オリンピックAO入試」に衣替え。国際数学オリンピック、国際情報オリンピックなど6つの国際科学コンテストの日本代表だけが出願できます。センター試験の受験は不要です。
AO入試といえば、「学力不問」入試のことだと誤解している人も多いかもしれません。しかし逆に、かなり厳しいAOもあり得ることが、おわかりでしょう。

なぜ、このような入試が必要となるのでしょうか。東京大学が秋季入学を検討していることに表れているように、日本の大学は、研究と教育の両面で、世界大学ランキング(外部のPDFにリンク)など海外と激しい競争を繰り広げています。そのためには留学生はもちろん、日本人学生の質を上げることが不可欠です。トップクラスの大学では、より優秀な学生を入学段階から引きつけようと努力しており、阪大の入試改革もそうした一環と言えるでしょう。
これからの大学入試は、必ずしも万人に平等な入試方法だけとは限りません。各科目で学んだ知識を基に、場合によっては「受験勉強」そっちのけで、本物の学問探究に打ち込んだ高校生にこそ門戸が広がるという入試も、今後ますます増えていくことでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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