家庭も学校も、節電対策!

本格的な夏の始まりです。東京電力福島第一原子力発電所の事故などに伴って、全国の広い地域で節電が求められています。ご家庭でも、コンセントを抜いたりクーラーを扇風機に替えたりと大変かもしれませんが、お子さんの通う学校でも、さまざまな節電対策に取り組んでいるのではないでしょうか。

学校は、分類上「小口需要家」(契約電力500キロワット未満の事業者)とされ、東京電力と東北電力の管内では、オフィスビルや商業施設、飲食店などと同様に、一律15%の削減が求められています。具体的には、▽教室や職員室、廊下の照明を間引きする(4割の間引きで16%削減)▽体育館の照明を4分の1程度間引きする(2%削減)……などの方法により、自主的な節電行動計画を策定し、実施することとされています。
国立教育政策研究所(国研)のシミュレーション(外部のPDFにリンク)によると、3列ある照明のうち1列を消せば、普通教室で11%、特別教室で5%の削減ができるといいます(給食室がない学校の場合)。照明だけでもけっこう節電ができるものですね。
でも、照明を間引きなんかして教室が暗くなって、勉強に支障が出たり目が悪くなったりはしないのでしょうか? 国研によると、晴れている朝や昼間であれば、窓側1列を消したとしても、「学校環境衛生基準」(外部のPDFにリンク)が定める照度が確保できるそうです。学校の校舎は、他の建物に比べて、片側に窓があるのが普通で、しかもその窓が大きく取られているため、もともと十分に明るいのですね。ということは、今まで無駄に電気を使っていたかもしれないということでもあります。

ところで、なぜ学校での節電対策が重要なのでしょうか。実は学校(外部のPDFにリンク)は、同じような面積の建物の中でも、ずっと電力を使わない部類に入ります。資源エネルギー庁によると、オフィスビルでは電力消費の48%と半分近くを空調が占めるのに対して、学校では夏場でも、照明が69%を占めています。しかし何といっても、学校は全国にたくさんあります。エネルギー経済研究所によると、学校の電力消費量は、業務部門の中で、事務所・ビル、卸・小売業に続く第3位に位置するほどです。全国の小・中学校約3万4,000校で、教室の蛍光灯の点灯時間を1日1時間短縮するだけで、6,360万キロワットの節電ができるといいます。これは、原油換算でドラム缶8万本分、CO2排出量で杉の木250万本分の吸収量に相当するそうです。1校では少しの節電でも、全国を合わせれば相当なものになるのです。

そして何より大きいのは、学校で節電に取り組むことをとおして、子どもたちの環境に対する意識が高まるということでしょう。環境教育は、学校教育法で「教育の目標」の一つに挙げられており、新しい学習指導要領でもその充実が図られています。
ちなみに、政府の電力対策では、家庭にも自主的な15%削減が求められています。夏休みにはお子さんと一緒に、節電対策(外部のPDFにリンク)に取り組んでみてはいかがでしょうか。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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