公立高校に「3学期制」回帰の動き 土曜も活用

1年間を前・後期などに分けて授業を行う「2学期制」は、今や普通の小・中・高校などでも導入されるようになりました。しかし、一部の自治体や学校では、小・中学校を元の3学期制に戻す動きも見られます。そんななか、文部科学省が公立高校の状況(2010<平成22>年度)を調べたところ、3年前の前回調査(07<同19>年度)と比べて、2学期制の実施校が減少。3学期制に回帰する傾向が明らかになりました。
それによると、全日制高校の学期の区分は、3学期制70.6%(前回調査比4.0ポイント増)、2学期制28.6%(同3.9ポイント減)、それ以外0.8%(同0.1ポイント減)。2学期制を実施する学校は30%を割りました。

高校の場合、伝統的に2学期制を実施していたごく一部の学校を除けば、90年代から「単位制高校」に転換する際、半期ごとに単位を出す関係で、2学期制に切り替えるケースがほとんどでした。しかし、これらの高校とは別に、現行の学習指導要領が高校1年生で始まった03(平成15)年度以降から、2学期制を導入する学校が徐々に増えてきていました。始業式・終業式や定期テストの回数を減らし、学校行事を見直したりするなどで、その分、授業を行える時間が増えるからです。学力向上に力を入れるためというのが主な理由でした。
過去の調査の数字を見ても、2学期制を実施する学校は、03(平成15)年度22.4%→04(同16)年度26.1%→05(同17)年度30.7%→06(同18)年度32.1%→07(同19)年度32.5%と、年々増加。逆に、3学期制は各75.7%→72.0%→67.8%→68.6%→66.6%と、減少傾向を見せていました。

今回3年ぶりの調査で、3学期制の学校が増えたのは、やはり、授業時間確保のために2学期制に切り替えた学校がやりにくさを感じて、再び元の3学期制に戻したという事情があるようです。小・中学校もそうですが、夏休みや冬休みを学期の区切りとする「季節感」を大事にした方が学習面だけでなく生活指導面からもやりやすいという先生方の意見も根強いようです。単位制高校などは引き続き2学期制を維持するでしょうが、授業時間が増えることだけを期待して2学期制にした学校は、数年間やってみても、やはり、やりにくさのほうが勝ってしまうようです。

2学期制の代わりとなる授業時間の確保策は、土曜日などの活用です。調査によると、普通科で、土日や祝日に「進学や資格取得等のための学習の機会の提供」を行うとした学校は、59.6%に上りました。3年前の調査では、土曜日の実施が54.3%、日・祝日が29.6%。調査方法が違うため単純な比較はできませんが、日・祝日にも実施する高校の多くは土曜日も活用しているとみられますから、やはり土曜日を活用する学校は増えたとみてよいでしょう。背景には、2002(平成14)年度の学校週5日制の完全実施(土曜休業を隔週から毎週に)をきっかけに、土曜日を休みにするよう厳しく指導していた都道府県教育委員会が、逆に、一定の条件の下で実施を認める方針に転換していったことがあるようです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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