「株式会社立大学」とは何だったのか

今年に入って学生募集の停止を発表する4年制大学が増えてきていることは、先日の記事でもお伝えしました。そんな中の1校に、LEC東京リーガルマインド大学(東京都千代田区)があります。このLEC大は、ほかの大学とは少し事情が違っています。政府の規制緩和方針に乗る形で特例として認められた「株式会社立大学」だということです。

そもそも正式な「学校」(法律に定めがあるもの)は、原則として国(国立)、地方自治体(公立)と学校法人(私立)しか設置できないことになっています。しかし、小泉純一郎政権の下で規制改革が進められるなか、民間企業にも学校経営への参入を認めるべきだという論議が起こり、大学については2004(平成16)年度より「構造改革特別区域」(特区)に限って認められるようになりました。LEC大は、その時に初めて認められた2校のうちの1校です。
LEC大の経営母体は、資格試験予備校を運営する株式会社です。そのような会社が大学を作れば、大学生が就職のことを考えて予備校にも通う「ダブルスクール」をしなくて済むではないか、という発想でした。

しかし、認可の際には文部科学省から多くの「留意事項」が付けられ、その後も毎年のように改善が求められ続けました。2007(平成19)年1月には学校教育法に基づく初の改善勧告も受けましたが、そこでは、大学の授業が予備校と実質的に同じだったり、十分な施設・設備の整備が行われていなかったりしたことが問題になっています。
そんななかでLEC大は定員割れが目立ち始め、最盛時には全国に14カ所あったキャンパスを12カ所に統合し、しかも2009(平成21)年度は11カ所を募集停止にしていました。今回、残る千代田キャンパスも募集停止にすることで、早ければ現在の1年生が卒業する2012(平成24)年度中に廃校となるものとみられます。なお、募集停止は学部のみで、会計大学院(2005<平成17>年度設置)のほうは引き続き募集を続けるとしています。

以前の記事で紹介しましたように、18歳人口の減少で大学経営をめぐる状況は厳しくなっていますから、淘汰(とうた)される大学が出てきても仕方のない状況にあることは確かです。しかし、新しい試みの大学ということで、希望に燃えて入学した意欲的な学生も少なくなかったに違いありません。創設から6年目の、やっと2期目の卒業生を出した時点で募集停止を決めるというのは、見通しが甘かったとの批判をまぬかれることはできないでしょう。普通の会社のように、採算が取れなければ撤退すればよい、というものではないはずです。

株式会社立大学では、2006(平成18)年度に開設されたLCA大学院大学(大阪市)も2009(平成21)年度から学生募集を停止しています。もちろん経営が順調な大学もありますが、これを機に、もう一度その在り方を検証する必要がありそうです。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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