教員「高齢化」で将来の学校はどうなる

小・中・高校の教員の平均年齢がほぼ44~45歳と過去最高を記録したことが、文部科学省が先頃発表した2007(平成19)年度「学校教員統計調査」(3年に1度実施)の中間報告でわかりました。保護者の皆さんの学校時代と比べて先生が高齢化していることは、学校に行ってみて実感されていることと思います。先生方にとっても、20代の先生が少ないなかで、40代や50代になっても子どもたちに全力で対応しなければならないのは、大変なようです。しかし、ここでは単にそうした現状を嘆くだけでなく、将来と今の学校がどうなるのかまで考えてみましょう。

教員の高齢化が続いているのは、第2次ベビーブームの子どもに対応して採用した年齢層が多いためです。調査によると、最も多い年齢は、小学校で51歳、中学校で48歳、高校で45歳。その前後5歳あたりが「大量採用」世代だったというわけです。世間では「団塊世代の大量退職」が問題となりましたが、学校には10年ほどのズレがあるのです。
逆に言うと今後10年で、その世代が定年を迎えて大量に退職していきます。いま50歳以上の先生は小学校と高校で約35%、中学校で約28%を占めていますから、ほぼ3分の1の先生が10年で入れ替わる、ということを意味します。
読者のかたは、「代わりに若い先生がたくさん入ってくるから、いいことじゃないか」「10年先なら、うちの子に関係ないわ」と思われるかもしれません。ところが、必ずしもそうとは言えません。確かに、最近は若い先生がちらほら学校に見られるようになりました。しかし、30代の先生が少ないように思いませんか。30代は、子どもの数が減っても教員の数がだぶついていたため、採用が極端に控えられた世代なのです。その世代が今後、リーダー層や管理職候補になっていくわけですが、ただでさえ層が薄いため、これから若い先生が大量に入ってきても、先輩として後輩を十分育てていけるのか、教育界では今から大きな頭痛の種になっているのです。

学校には最近、「主幹教諭」「指導教諭」といった中間管理職的な役職が置かれています。また、現職の先生の研修制度を充実させたり、指導力をアップさせるための「塾」を設けたりする教育委員会もあります。教員養成でも、教育学部の新設が相次ぐほか、「教職大学院」も設置されるようになりました。こうした動きは、実は、来るべき大量退職・大量採用時代を見越してのことという側面もあるのです。
今後10年ほどの間に、学校の運営にも大きな変革が迫られています。その兆しが既に表れているとしたら、今の子どもたちや保護者にとっても無視できないでしょう。また、これから大量に採用されてくる若い先生方も、一人前の先生に育つまでには長い時間と困難が伴うことになります。保護者としても温かい目で見守ったり、時には人生の先輩としてアドバイスしてあげたりすることも、求められるのではないでしょうか。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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