新指導要領で夏休みはどうなるの?

夏休み真っ盛り。そんな時に、終わりの話をするのは水を差すようで恐縮ですが、たとえば隣の市町村、あるいは同じ市町村でも学校によっては、休みの期間が違う、というところも、今や少なくないのではないでしょうか。しかも新しい学習指導要領では、授業時間数が増えるといいます。これから授業と休みの日数は、いったいどうなるのでしょうか。

その前に、授業日数や休みの日がどう決まるかを見ていきましょう。学習指導要領では、小・中学校については年間35週以上(小学1年生は34週)、高校については35週を標準として授業などを行うとしています。ただし、多くの学校では年間200日(40週)というのが通例のようです。そうすると、学校週5日制を取っている公立を例に取れば、授業のある週の土・日分が年間80日、国民の祝日が年間15日ありますから、残りは約70日。これが夏休みや冬休み、春休みなどに充てられることになります。
夏休みなどの期間は、公立の場合はその学校を設置する教育委員会の規則で、私立の場合は学則で、定めることになっています。昔から北日本などでは夏休みと冬休みが同じくらいの日数で、それ以外の地域では夏休みのほうが長いのが普通でしたが、各教委などが地域の事情に合わせて適宜、設定しているからなのです。

ここで、小・中学校の新しい学習指導要領に注目してみましょう。「授業時数等の取扱い」(総則 第3)では今回から、「効果的な場合には、夏季、冬季、学年末等の休業日の期間に授業日を設定する場合を含め、これらの授業を特定の期間に行うことができる」という一文が入りました。ご存じのように新指導要領の下では、いわゆる主要教科を中心に、小学1・2年生で年間70時間ほど、それ以上の学年で35時間、それぞれ総授業時数が増やされたのですが、この分を夏休みなどの短縮で確保する道を開いたわけです。
ただし、現在でも標準を超えて授業を行っている学校は、たくさんあります。たとえば小学6年生は現在、年間945時間が標準ですが、2005(平成17)年度の授業時数の平均は、新指導要領(980時間)をも上回る986時間でした。ですから数字上は、現状をやりくりして新指導要領に対応することも、できないわけではなさそうです。

ただし、多くの学校で標準以上の授業時数が行われるようになったのは、2002(平成14)年度から完全学校週5日制と現在の指導要領が同時にスタートし、学力低下が心配されたのを契機にしてのことでした。夏休みを何日か短くする市町村が出てきたのも、その一環です。今回、新指導要領で授業時数が増やされることにより、さらに授業日数を増やそうという教委や学校が増えてくるのは必至です。
一方で夏休みなどは、普段はできないさまざまな体験ができる貴重な機会です。限られた1年間をどうやりくりするか、授業の在り方や子どもの生活の在り方も含めて、新指導要領の全面実施(小学校は2011<平成23>年度、中学校は2012<同24>年度)までに、学校とよく話し合う必要がありそうです。

<参考>
2008年1月17日中教審答申(授業時数についての考えに言及)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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