台形の面積は「復活」なの?

学校の授業の基準になる学習指導要領の改訂論議が、大詰めを迎えています。そんななか、新聞で「台形の面積復活」という見出しがおどりました。一読して、「ああ、『ゆとり教育』で消えた『(上底+下底)×高さ÷2』の公式を、また覚えさせるんだな」と思われた方も多いのではないでしょうか。この問題は次の指導要領だけでなく、今の指導要領をどう理解するかについてもわかりやすい事例だと思いますので、解説を加えてみましょう。

台形の面積は「復活」なの?


今の指導要領では確かに、前回(1992(平成4)年施行)の指導要領にあった「三角形、平行四辺形、台形などの面積の求め方について知ること」(小学校算数・第5学年「量と測定」)という記述から、「台形」が消えました。これをもって、小学生は台形の面積を求めなくてもよくなった、と勘違いしてしまうのは、無理もないことかもしれません。
しかし、今の指導要領では、「三角形及び平行四辺形の面積の求め方を考え、それらを用いること」となっています。微妙な違いですが、「知ること」から「考え」「用いること」に変わったことが、実は大きなポイントでした。

三角形や四角形の面積の求め方がわかれば、平行四辺形や台形の面積も求めることは可能です。しかし、「(上底+下底)×……」の公式を丸覚えしているだけでは、その公式を忘れてしまうと、もう求めることができなくなってしまいます。
このように、たとえ公式を忘れてしまったとしても、自分で公式を導き出せるぐらいに「考える力」を付けさせよう、というのが、「ゆとり」の本当のねらいだったのです。

もちろん、そうした力を付けさせる授業が実際にできていたのか、となると、議論はあるでしょう。これまで公表されている中央教育審議会の検討素案を見ると、「既習の面積の求め方を活用してひし形や台形の面積の求め方を考え説明する内容を指導する」(「算数、数学」の「改善の具体的事項」)とあります。つまり、どの子も台形の面積の求め方を自分で考え出し、説明できるようにする授業を必ずやりなさい、というわけです。

ここで出てくる「説明」ということは、算数のみならず、次の指導要領そのものの重要なポイントであるとすら言えます。検討素案では「算数、数学」の「改善の基本方針」で、「数学的な思考力・表現力は……互いの知的なコミュニケーションを図るために重要な役割を果たすものである」としています。
要するに、自分で解き方がわかるだけではなく、自分の考えを友達にも伝え、理解してもらう「力」までも育てることを求めているのです。

そう考えると、授業参観で、そうした話し合いの授業が行われていたのをご覧になったかたもいらっしゃるのではないでしょうか。意外に思われるかもしれませんが、「『ゆとり教育』の見直し」が単に今の指導要領を否定したものではないことが、ここからもうかがえます。

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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