学校給食は「義務」なの?! 未納額、全国で22億円

小・中学校での学校給食の未納額が2005(平成17)年度、全国で約22億3,000万円に上ることがこのほど、文部科学省の調査「学校給食費の徴収状況に関する調査の結果について」でわかりました。児童・生徒の100人に1人が未納となっており、未納者のいる学校は44%を占めています。なかには「義務教育だから払わなくていい」などと主張する保護者もいることが、報道でも大きく取り上げられました。ところで、学校給食はどういう位置付けで実施されているのでしょうか。

学校給食法によると、その目的を「児童及び生徒の心身の健全な発達に資し、かつ、国民の食生活の改善に寄与する」としており、国や自治体に対しては「学校給食の普及と健全な発達を図るように努め」ることを求めています。つまり、学校給食を子どもの成長にとって重要なものと認めつつも、その実施は「努力義務」にとどめており、必ず実施することまで求めているわけではありません。実際、2005(平成17)年度の学校給食実施率(ミルクだけの場合なども含む)は小学校98%、中学校85%であり、全校で実施されているわけではないのです。

そのうえで同法は、学校給食の目標として(1)食事について正しい理解と望ましい習慣を養う (2)学校生活を豊かにし、明るい社交性を養う (3)食生活の合理化、栄養の改善、健康の増進を図る (4)食糧の生産、配分及び消費について、正しい理解に導く……を挙げています。実施は「義務」ではないが、実施する場合には「教育」として位置付ける、というわけです。

しかも同法には、学校給食の施設・設備や職員の人件費は学校の設置者(自治体や学校法人など)の負担、それ以外の費用は保護者の負担とすることを明記しています。ですから、「義務教育だから」という理屈はとおらないのです。「教科書は無償じゃないか」という反論も聞こえてきそうですが、実は、憲法で保障されている義務教育の無償制とは授業料を無料にすることであり、教科書ですら政策として無償が続いているだけなのです。

文科省調査によれば、未納の主な原因を60%の学校が「保護者としての責任感や規範意識」だとしており、「保護者の経済的な問題」の33%を上回っています。ただ、これはあくまで学校側の見方です。生活保護や就学援助の受給資格を満たす家庭であっても、申請しないケースは少なくありません。家庭にはさまざまな事情がありますので、単に「保護者が悪い」と責めれば済むものでもないでしょう。

しかし、未納分をどう補っているかを尋ねると、「徴収した学校給食費から学校給食を実施」が29%、「学校が他の予算等から一時補填(ほてん)」が27%などとなっています。未納額は全体の0.5%に過ぎないとはいえ、食事の質を落とさなければならなかったり、ほかの予算を削らなければならなかったりする場合があるのも事実です。

学校給食は、専門の栄養士(学校栄養職員など)が子どもの健康や教育効果など、さまざまな要素を考えて献立を工夫しています。日本スポーツ振興センターの調査によれば、家庭でも不足しがちなカルシウムや食物繊維を学校給食が補っている、という実態もあります。子どもにとって大切な学校給食の在り方について、学校や自治体任せにするのでなく、PTAなどでも話し合っていく必要がありそうです。


※学校給食実施率…「学校給食費の徴収状況に関する調査の結果について」の「学校給食実施校総数」データと「平成17年度 学校基本調査速報 参考図表」の「学校数」データより算出しています。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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