小学生の学びを広げよう!ICTを活用する時に家庭で実践するとよいこと

  • 新課程の英語特集

佐藤久美子先生   
玉川大学大学院教育学研究科名誉教授
聞き手 加藤由美子 
ベネッセ教育総合研究所 主席研究員

学校教育におけるICT活用が徐々に進む中、前回は、小学生の英語学習にICTがどのように役立つのか、お話しいただきました。今回はさらに、子どもの学びや成長においてICTがどのような点で役に立ちそうか、またICTを活用する時に家庭で実践してみていただきたいことを佐藤久美子先生に伺いました。
参考(前回記事):「小学校英語の専門家に聞く!授業でのICT活用と家庭でできる効果的なサポートとは?」

この記事のポイント

ICTの活用で子どもの心を動かす

加藤:前回は、小学生の英語学習でのICT活用において、自分のペースで英語の音を聞き、話す練習を行えること、場所や時間を超えて校外の人と英語でつながれることを伺いました。ICT活用によって、英語の学びや子どもの成長に役立ちそうな、よい事例を、もう少し教えていただけますか。

佐藤先生:楽しい事例があります。

  • Where do you want to go? 
    どこ(どこの国)に行きたいですか?
  • I want to go to France.   
    私はフランス(子どもが行きたい国名)に行きたいです。

このように、外国のどこの国に行きたいかを英語でやり取りをする活動は、よく行われます。子どもはその国を選んだ理由や見たり食べたりしたいものも紹介します。その際、2・3年前までは、簡易なボードに旅行会社のチラシを貼ったりして発表するのが主流でした。

ICTが活用できる今では、インターネットで行きたい国について調べ、使ってよい絵や写真などを手に入れて端末上で資料を作って発表しています。ある小学校ではこの活動を発展させて、行きたい国のコマーシャル動画を、iMovie(字幕やタイトル挿入、BGMの音楽などを使える動画編集アプリ)やGoogle Earth(3D地図を使って世界中の場所を映し出せるサービス)などを使って作っていました。

臨場感のある、すばらしい動画の発表を見た子どもたちからは、‘Wow!’という驚きの声、‘One more time, please!’ともう一度見ることをリクエストする声が自然に出ていました。子どもは人に何かを伝えることを喜びとします。同様に知らないことを知ることにも喜びを感じます。ICTを使うことで、目から耳からリアルな刺激を受け、思わず感動の言葉が出たのでしょう。心を動かして知ったこと、聞いた言葉や使った言葉は、子どもの心と頭の中にしっかり残っていきます。

ICTが英語学習と他教科の学びをつなげ、広げる

加藤:多くの教科を担任の先生が教える小学校においては、教科間のつながりの強さがあると思います。英語と他教科とのつながりにおいてもICTは役に立っているでしょうか。

佐藤先生:英語の学習で他教科の知識、コンテンツを使う活動はたくさんあります。英語で行うスリーヒントクイズというものでは、子どもが3つの英文を聞いて、それが何かを考えたり、子どもが問題を作ったりもします。次のスリーヒントはどの都道府県を説明したものでしょうか。

  • It is very cold in winter.     
    冬はとても寒いです。
  • It rains little in June.      
    6月にはほとんど雨が降りません。
  • It is famous for the Snow Festival.  
    雪まつりで有名です。

答えは北海道ですね。このスリーヒントクイズには社会科の知識を使っていますが、その際、ICTを使うと以前より簡易に情報を探したり、見せたりできます。クイズをする前に、都道府県別の気温や降水量をあらわすグラフを見たり、特産物や有名な行事を調べたりして、それを英語で話すこともできます。クイズに動物や植物を出題すれば理科の、食べ物を出題すれば家庭科の知識も使えます。他教科で馴染みのあるものを使うと英語学習への意欲を高めることができるとともに、クイズを作るために、子どもがインターネットなどを使って調べる楽しさや知らないことを知る喜びを体験することも可能になると考えられます。

タブレットを活用した授業で、先生の説明を聞くこどもたち

ICTを活用する時に家庭で実践するとよいこと

学校でICTを活用した英語の学びや子どもの成長に役立ちそうな、よい事例を教えていただきました。家庭でICTを活用する場合は、どのような点に気を付けていったらよいか、英語に限らず、学びを広げるために、実践してみていただきたいことを佐藤先生に教えていただきました。

●インターネットの複数の情報を比べたり、違いを考えたりすることを一緒にする

インターネットからたくさんの情報を得られるようになりました。一方で、そこに掲載されている情報がすべてではないこと、正しい情報ばかりではないことを、徐々に教えていってあげてください。ご家庭でインターネット利用が可能な場合には、お子さまがインターネットで調べていることについて、複数の情報を比べてみたり、違いを一緒に考えたりしてみてください。

同じことを調べる場合にもさまざまな情報があること、同じ情報に対して人によって見方や考え方が違うことなどに気付けるような話し合いをしていただけるといいですね。

●インターネットだけでなく、紙の教科書や資料集、辞書、図鑑などの活用を促す

インターネットを使うと欲しい情報を素早く得ることもできるようになりました。一方で、調べたことはその情報だけで断片的な場合があります。また、意識して保存しないと消えていってしまいます。

そこで、調べたこと、知ったことを紙の教科書や資料集、辞書、図鑑などで確認してみることを促してみてください。これらのものは専門家の監修などを受けて作られたものが多いので情報が信頼できます。そこに線を引いたり、印をつけたりすることで理解が深まったり、記憶しやすくなったりします。また、欲しい情報だけでなく、それに関連する情報を含めて全体像を理解したり、新しい情報を得たりもできます。

ICTの強みを生かしながら、それをさらにうまく補強して、活用していっていただくとよいでしょう。

プロフィール

加藤由美子

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