コンビニにはヒントがいっぱい。竹下隆一郎さんに聞く、SDGsを親子で知る方法

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よりよい世界をめざすための17の目標、SDGs。小中学校の教科書にも登場していますが、どう学んだらよいのかわからずとまどいを感じている保護者もいるのではないでしょうか。

『SDGsがひらくビジネス新時代』(ちくま新書)を発売し、小学校で子どもたちにSDGs教室を開いたこともある竹下隆一郎さんに、親子でSDGsを知るおすすめの方法を聞きました。身近な場所でSDGsを学ぶことは、子どもたちの表現力や論理的思考力を伸ばしてくれるかもしれません。

子どもは大人より現実を知っている。SDGsのよくある勘違いトップ3を竹下隆一郎さんに聞いた

この記事のポイント

コンビニにはSDGsのヒントがいっぱい

おすすめ①:一緒にコンビニに行く

──なぜでしょうか?

竹下:コンビニはSDGsのヒントの宝庫なんです。2020年7月にレジ袋の有料化が始まってマイバッグを持つ人が増えましたよね。どれくらいのお客さんがマイバッグを使っているのか見てもいいですし、どんな食品の容器が使われているか調べてみてもいいですね。大豆ミートを使った商品もあるかもしれません。

──大豆ミートはSDGsにどんな関係がありますか?

竹下:SDGs目標13に「気候変動に具体的な対策を」があります。牛の胃で発生してゲップとして出される「メタン」は二酸化炭素の25倍くらいの地球温暖化効果があるといわれています。そのため世界的に「お肉を食べない」人が出てきて、代わりに大豆のハンバーガーや大豆のミートボールが登場したんですね。

また、コンビニには海外出身の店員さんやお仕事帰りの女性や男性などいろいろなかたがいます。仕事をしている人のバックグラウンドがどんどん多様になっています。SDGs目標5に「ジェンダー平等を実現しよう」がありますが、日本ではまだ女性の管理職が少ないといった問題もあります。誰も取り残さない世界の実現のためにどうすればいいのか、誰もが働きやすい社会になるためにはどうしたらいいか、子どもたちに聞いてみたらおもしろい答えが返ってくると思います。そして、この答えには正解不正解がありません

矛盾があって正解がないSDGs。考えることが大切

──めざすものはあるけれど、解決方法はわからないということですか?

竹下:レジ袋が有料化されたことでマイバッグを持つ人が増えました。脱プラスチックのきっかけになるといったメリットがあり、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」に関連します。一方で商品を買った人がわかりにくく万引きが増えてしまう問題もあります。

SDGsをめざすと必ず矛盾は起きますし、大人にも答えはわかりません。だからみんなで一緒に考えていく必要があります。

──誰もが納得する答えはないですね。

竹下:必ずしも答えを出す必要はないんです。何か問題があったときに矛盾が発生することを子どもたちに考えてもらうことは、探究型の学習につながります。「レジ袋有料化でどんな良かったことと悪かったことがあって自分はどう思うのか」と考えることは論理的思考力を育ててくれますし、そういった論述スタイルの問題は中学入試にも登場しています。

子どもと大人で対等に話し合おう

おすすめ②:グレタ・トゥーンベリさんの国連スピーチを聞く
おすすめ③:ウェビナー(Webセミナー)に参加する


竹下:この2つは家でできることですね。②は2019年の国連気候変動サミットでのグレタ・トゥーンベリさんのスピーチです。子どもたちに世代が近いですし、言葉がわからなくても「地球に大変なことが起きている」ことはきっと伝わると思います。

ビジネスや政治の世界的リーダーのスピーチへの反応、グレタ・トゥーンベリさんが始めた学校ストライキについても知ってほしいですね。

──はい。③のウェビナーは、子ども向けのものでしょうか?

竹下:たくさんのSDGsに関するウェビナーが開かれています。大人向けでも子ども向けでも一緒に参加してみてはいかがでしょう。環境やジェンダーの問題について真剣に話し合う大人の姿を見るのもいいと思いますし、「持続可能性」「経済合理性」(経済的な利益があると考えられること)などちょっと難しい言葉を調べてみるのもいいですね。

子どもにはわからないだろうと決めつけず、大人向けのセミナーでも、思い切って、一緒に参加して話し合うことがおすすめです

表現力や論理的思考力も身につけられる

おすすめ④:大人が子どもに謝る

竹下:小学校でSDGsの授業をしたとき、まず私が「ごめんなさい」と言うことからスタートしました。子どもたちに大きな問題を残してしまったのは大人たちですし、大人にもわからないことがあると認めたほうがいいと思います。

おすすめ⑤:カードゲームで遊ぶ

──SDGsのゲームは授業でも盛り上がると聞きます。

竹下:金沢工業大学が制作したゲーミフィケーション教材「THE SDGs アクションカードゲーム X(クロス)」というカードゲームがあります。「環境のためにエアコンを使わないようにしたら、熱中症になりかけた」「Eラーニングが主流になったけれど、その分外に出ない人が増えた」みたいなジレンマの関係が問題提起されるゲームで、そうした課題に対して、いろいろな「解決カード」を使ってアイデアをプレゼンテーションするんです。改善してほしい点もありますが、大人も楽しめるのでぜひやってほしいなと思います。ほかにも、SDGsのゲームを探してみるのもいいでしょう。

──プレゼンテーションには表現力が問われますね。SDGsに取り組むことで、子どもたちはどんな力を身につけられますか?

竹下:今子どもたちに求められている「人に話を聞いて協力し合う力」「自分の考えを表現する力」が伸ばせます。SDGsには正解がなく、自分一人だけでは解けない問題。子どもたちが本当の論理的思考力を身に付けることにも役立つと思います。

まとめ & 実践 TIPS

地球の未来を考えることで、子どもの成長にもつながるSDGs。まずはコンビニなどの身近な場所から始めて、子どもと一緒に学んでいきましょう。

国連広報センター(UNIC Tokyo)「グレタ・トゥーンベリさんによるCOP25でのスピーチ(日本語字幕版)」

編集/磯本美穂 執筆/樋口かおる

『SDGsがひらくビジネス新時代』
(竹下隆一郎著、筑摩書房刊)

参考:
金沢工業大学 SDGs推進センター
https://www.kanazawa-it.ac.jp/sdgs/education/application/game-1.html

プロフィール

竹下隆一郎

PIVOT執行役員、チーフSDGsエディター。1979年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2002年に朝日新聞社に入社。民間企業や経済官庁を取材する経済部記者、デジタルメディアの新規事業を担う「メディアラボ」を経て、2014〜15年にスタンフォード大学客員研究員。朝日新聞社を退職し、2016年からハフィントンポスト日本版編集長。2021年にハフポストを退職し、東洋経済オンラインやNewsPicksの編集長を務めた佐々木紀彦氏らとともに経済コンテンツサービス(2021年中に開設予定)の創業メンバーに。世界経済フォーラム(ダボス会議)・メディアリーダー、ネット空間における倫理研究会委員、TBS系『サンデーモーニング』コメンテーター

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