【プログラミング教育】親もいっしょに創意工夫してみよう

2020年度から新学習指導要領へと切り替わり、小学校においてもプログラミングに関する学習が必修化されています。前回の記事では、その位置づけについて解説しましたが(注1)、今回は、その「プログラミング的思考力」を具体的に育成していくために、親の立場からできる取り組みについて解説してみましょう。

この記事のポイント

今すぐ望ましい学習が行われる状況にはない

2020年度の1学期は、差し迫った社会不安の中で行われたこともあり、ほとんどの学校においてプログラミングに関する学習は後回しになっています(注2)。
今後、オンライン授業が当たり前になり、教室の中で完結しなくてはならないという前提がなくなれば、プログラミングに関する学習もより専門に近い先生に(遠隔で)学ぶことができる、という可能性はありそうです。ですが、今すぐすべての学校のすべてのクラスに対して均等な機会を設けることはちょっと難しいでしょう。日本の小中学校のデジタル対応の遅れは、深刻ですし、安全を守るための感染対策や子どもたちへのケアで、先生方も疲弊しています(注3)。

一方、家庭の中で取り組めることは、実はたくさんあります。本格的なプログラムを書くのは誰にでもできることではありませんが、今ではたくさんマニュアル本も出版されていますので、入門程度のことであれば、未経験の親でもいっしょに取り組むことができます(なにしろ、小学生にできるぐらいなのですから)。本格的に始まるのがいつになるかわからない今、もし、お子さんが興味を持ちそうなタイプなら、休日にでもプログラミング学習を試してみるのはいかがでしょうか。

プログラミング的な考え方を学ぶための3つの例

前回の記事において、子どもたちが学ぶ場合は、プログラミングの書き方自体ではなく、考える「手段」として取り入れ、「目的」と接続させることが大事であることを指摘しました。ここでは、その視点を中心にして、家庭でもできる具体例を示してみます。

1)Viscuitを使ったシミュレーション

原田康徳氏が開発したViscuit(ビスケット)は、文字のコードを書くのではなく、絵を使って画面上で行う変化を命令する子ども向けのビジュアルプログラミング言語です。ちなみに無料です。 たいへんわかりやすいので、簡単なアニメーション程度であれば幼稚園児でも試行錯誤しながらプログラムを組むことができます。
原田氏は、この言語を使って感染症がどのように広がるのかのシミュレーション作例を公開されています(注4)。プログラムを描くと、接触して感染した人が、元気な人に接触して病気の人がどんどん広がっていく様子が可視化されています。実際に自分の手で条件を変えながら試してみることによって、コロナ禍の中でなぜ人々の行動が制限されるのかについて、一段階深く理解できます。これはただ動くアニメーションを作っているわけではなく、プログラミングすることによって感染が広がる仕組みを理解することができる、優れた事例といえるでしょう。

2)micro:bitを使って楽しい道具を作る

micro:bit(マイクロビット)はイギリス発の教育用マイクロコンピューター(マイコン)です。数センチほどの基盤にいくつかのセンサーが付属しているもので、大手通販サイトで3,000円程度で購入できます。マイコンに命令を書き込むのは、別途パソコンが必要ですが、画面の中で日本語のブロックを組み立てるようにして行えますので、比較的取り組みやすいと言えます。

この「日本語のブロックを組み立てる」ような子ども向けのプログラミング環境は、scratch(スクラッチ)がよく知られています。scratchと比較してmicro:bitが特にユニークなのは、マイコンが単独で動くので、工作と組み合わせて楽しい道具(ガジェット)を簡単に作ることができる点です。たとえば付属している加速度センサーを利用したデジタル分度器や、地磁気センサーを利用したデジタル方位磁針など、理科や算数の学習とも親和性の高いものを自分で作ることができます。

倉本大資氏は、このmicro:bitを使った腕時計型デバイス「探検ウオッチ」をこどもたちに紹介する書籍を書かれています(注5)。私も彼の本を元に子どもたちといっしょにいくつか作ってみましたが、このたいへん小さなコンピューターの中に、さまざまな用途に使える可能性が埋め込まれていることに驚かされます。こういった教材を使って親子で遊んでみることで、プログラミングを実際に遊びや学習に役立てられる楽しさを知ることができるでしょう。

3)考え方を育成する「絵本」

手を動かすことはどうも苦手だ、というかたは、コンテンツを通していっしょに考えるという方法もあります。たとえば、コンピューターをつかわないでプログラミング的な考え方を学ぶための絵本がいくつか出版されています。フィンランド発の『ルビィのぼうけん』シリーズが有名ですが、筆者のおすすめは佐藤雅彦氏らによる、『プログラムすごろく アベベのぼうけん』(上・下)(注6)です。ただ話を読むだけでなく、実際にすごろくの指示によって話を読み進めていくことで、考え方を自分で体験しながら理解していくことができます。佐藤雅彦氏はプログラミング的思考力をテーマにした「テキシコー」(NHK教育)も監修されていますが、一見当たり前の日常に潜む数学や論理の考え方の過程に焦点を当て、魅力的なコンテンツに転化してしまう第一人者です。こういったコンテンツを通して、お子さまといっしょに考えてみることは、大人にとっても大きな刺激になるでしょう。学びはけっして苦痛に耐える中にあるのではなく、日常への好奇心やコミュニケーションとともにあることに気づかされるはずです。

周囲の人々を頼ろう

3つほど具体例を紹介しました。こういった入門レベルのことは、難しいところもあるかもしれませんが、家庭でやれば教材費程度の出費で充実した学習体験を手に入れることができます。ただし、単発でやってみただけではなかなか定着した学びになりませんので、週に1回1時間、とりあえず2ヶ月は継続してやってみよう、というように計画を立てることが大事です。

しかし、どうしても苦痛だというかたや、いっしょに学ぶ時間が取れないというかたもいらっしゃるでしょう。そういった場合、全部自分で背負い込んでしまう必要もないですので、周囲の人を頼ってみるのも一つの手です。お父さんや、知り合いの若者など、得意そうなかたが身近にいれば、レッスンをお願いしてみるといいことがあるかもしれません。実は、子どもたちにプログラミングを教えてみたいという人は、けっこういます。マンツーマンで学ぶなら、対面でなくても、Zoomなどのビデオ会議でも十分行えるはずです。

まとめ & 実践 TIPS

子どもたちにとっては、なによりも「楽しさ」とともに学ぶことが大事です。労働としてではなく、プログラミングすることによって自分にできる自由度を広げている。そんな背中を持つ人との接点を持つことによって、早くからプログラミングを学ぶ意味を理解できるはずです。


(注1)プログラミング「で」学ぶ方がいい
https://benesse.jp/kyouiku/202007/20200718-1.html


(注2)親子の生活における新型コロナウイルス影響調査
調査形式:インターネット調査
調査対象:全国 47 都道府県在住の約 3,500 世帯(1歳~高校 3 年生のお子さまがいる世帯)
調査実施時期:3/20頃~6/29頃の期間、毎週実施
ベネッセコーポレーション実施

(注3)OECDから発表されたデータによると、コロナ禍以前から日本の先生たちは、ICTスキルやそれらを学ぶ環境も時間も、世界でダントツで最下位、という衝撃的な結果がでています。
2020年新型コロナウイルス感染症パンデミックへの教育における対策をガイドするフレームワーク(日本語版) https://www.fu-edu.net/sites/default/files/archives/2020/archive-20200423-13256.pdf

(注4)【Viscuit】かぜがうつる:ビスケットのあそび方
https://www.youtube.com/watch?v=-6lUkvOfufU

(注5)倉本大資『アイデアふくらむ探検ウォッチ micro:bitでプログラミング』誠文堂新光社 2020年

(注6)佐藤雅彦・石澤太祥・貝塚智子・ダイスケ・ホンゴリアン『プログラムすごろく アベベのぼうけん』(おどろきの上巻/かんどうの下巻)小学館 2019年

プロフィール

上平崇仁

上平崇仁

1972年鹿児島県阿久根市生まれ。筑波大大学院芸術研究科修了。コペンハーゲンIT大学客員研究員等を経て、現在は専修大学ネットワーク情報学部教授。社会人向けデザインスクールでも教鞭をとる。専門は協働デザイン、情報デザインなど。著書に「情報デザインの教室」等(丸善出版)。

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