幼児期のデジタル学習 学んだことを実体験でも生かすことが習得につながる【専門家に聞く第8回目】

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近頃、幼児教育においても「デジタル学習」という選択肢が一般的になってきました。特にコロナで在宅時間が増えた今、家庭でできる習い事や遊びの延長として「デジタル学習」を取り入れるご家庭も多いようです。そこで今回は、デジタル学習を幼児期から取り入れる際の注意点についてご紹介します。お話を伺ったのは、幼児教育とデジタルメディアの関わりを長年研究されている、愛知淑徳大学の佐藤朝美先生です。

この記事のポイント

幼児期に育みたい「社会情動的スキル」

デジタル学習に限らず、最近では早期教育に取り組むご家庭が増えています。早いうちからお子さんにさまざまな知識を身につけてあげるのは素晴らしいことですが、幼児期において育んであげたいものとして「社会情動的スキル」が注目されています。OECDではたくさんのスキルをもとに定義していますが、たとえば<他者との関係構築のために必要な力や目標達成のために必要な忍耐力>などもその中に含まれます。園などで子どもが共同で何かを達成する中で育まれると同時に、家庭における学習環境も重要な役割を果たすと言われています。

本連載の第7回目では、主に言語や数・文字などいわゆる「認知スキル」と呼ばれるものを育むデジタル学習を紹介しましが、社会情動的スキルは「非認知スキル」とも呼ばれ、両輪で育てるべきものとOECDは説明しています。家庭でできる活動として、親子のやりとり(例:本を読む、一緒に食事をする、ゲームをして遊ぶ)が示されています。これらの親子のやりとりをより豊かにするものとして、デジタルコンテンツを取り入れるようにしましょう。

参照:OECDサイト資料
http://www.oecd.org/education/ceri/FosteringSocialAndEmotionalSkillsJAPANESE.pdf

関連リンク:
幼児期のデジタル学習 学習意欲を持続させるのに効果的?【専門家に聞く第7回目】
http://benesse.jp/kyouiku/202009/20200910-3.html

デジタルで学んだことを表現に結びつける

幼児期の学習において、認知的なものだけでなく社会情動的な発達も重要だとご説明しました。そこで有効なコンテンツとして「デジタル絵本」が挙げられます。自動読み上げモードでお子さんが一人で読むのではなく、ぜひ親子の遊びの時間として活用してください。最近では多種多様な仕掛けや物語の世界観を遊べるものもたくさんあり、おうちのかたも一緒に楽しめます。
さらに、物語を味わうだけでなく、作ることにチャレンジするのもおすすめです。デジタルであれば簡単に自分の世界を創りあげることができます。「ピッケのつくるえほん」というアプリは、可愛らしいイラストを用いながら乳幼児でもデジタル絵本を創ることができます。家庭での温かく習慣的なかかわりが、社会情動的な発達を促進すると言われていますので、親子で楽しみながらデジタル教材を有効活用しましょう。

参照:「ピッケのつくるえほん」アプリ
https://www.pekay.jp/pkla/ipad

知らない世界への興味をもつきっかけに

デジタル学習の良さのひとつに、「気軽に何度でもできる」という点があります。例えば、ひらがなの学習を例にとってみましょう。デジタル機器を使えば、お子さんは文字の形を簡単に覚えることができ、何度も書いたり消したりの練習を繰り返すことができます。しかしどれだけ文字の形を覚えることができても、実体験の中で使いこなすことができなければきちんと身についているとは言えません。「好きな絵本が読めるようになる」「自分で手紙が書けるようになる」そういったリアルな達成感を得て初めて、お子さんはひらがなを習得したと言えるのではないでしょうか。

<デジタルで学んだことを実体験でも生かす>、それを繰り返すことがデジタル学習においては重要です。また、デジタル学習には、実体験ではできないことを見たり触れたりできる良さがあります。たとえば、ミクロの世界を覗いたり、海の中や宇宙空間へ行ってみたり、現実世界では不可能なこともデジタルなら可能になります。幼児期に必要な学習は、決して文字や数字の習得だけではありません。そういったデジタルならではの使い方を生かして、お子さんの興味の幅を広げてあげられると良いですね。

まとめ & 実践 TIPS

デジタル学習を利用する際は、そこだけで完結させず、学んだことを実体験でも生かせるようお子さんを導いてあげてください。リアルと結びつけることで、お子さんはより達成感を得られるようになります。また、デジタルでしかできない体験を通じて、興味の幅も広げてあげましょう。実体験では学びづらいこともデジタルを活用すれば直感的に学ぶことが可能になりますよ。そして何よりも、幼児期に最も大切なことは、「親子で一緒に遊ぶ時間をしっかり取ること」だとぜひ覚えておいてください。そのうえで、デジタル学習を上手に活用して、お子さんの学ぶ意欲を伸ばしてあげられると良いですね。

プロフィール



愛知淑徳大学人間情報学部准教授。東京大学大学院学際情報学府博士課程、情報学環助教、東海学院大学子ども発達学科を経て現職。教育工学、幼児教育、家族内コミュニケーション、学習環境デザインに関わる研究に従事。日本子ども学会(理事)。オンラインコミュニティ「親子de物語」で第5回、「未来の君に贈るビデオレター作成ワークショップ」で第8回、「家族対話を促すファミリー・ポートフォリオ」で第11回キッズデザイン賞を受賞。

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