公立小中の先生の数、減らして本当に大丈夫?

財務省が、公立小中学校の教職員数を今後10年間で約4万2,000人減らせるとの試算(外部のPDFにリンク)をまとめました。少子化に見合った学校統廃合を進めるだけでなく、約4,000人の「加配定数」(外部のPDFにリンク)の削減も求めています。教職員定数をめぐっては昨年、小学1年生で行われている35人学級を40人に戻すよう財務省がいったん提案し、文部科学省などの猛反発を受けて撤回された経緯があります。本当に先生の数を減らしてよい状況にあるのでしょうか。

公立小中学校の教職員定数は、学校・学級数を基本として算定される「基礎定数」のほか、教育課題に対応してプラスされる加配定数によって決まります。学級数の減り具合と同じ割合で加配(標準学級当たり加配教員数)も減らせるはずだというのが財務省の主張です。
しかし実際の「学級」では、昔は見過ごされてきた子どもの存在が浮かび上がり、ますます指導が大変になっているのが実態のようです。その代表的なものが学習障害(LD)などの「発達障害」で、文科省の調査(外部のPDFにリンク)では6.5%(40人学級1クラスに2~3人)いると推定されています。一方、発達障害は「発達の凸凹(でこぼこ)」ともいわれるとおり、この中の2%分(同1人)は凸(でこ)、つまり特異な才能に秀でた「ギフテッド」だという医学関係者の指摘もあります。
さらに、少数ですが性同一性障害の児童生徒もおり、文科省は先頃、性的マイノリティーも含めてきめ細かな対応を行うよう通知したところです。

こうした先天的な何らかの障害だけでなく、外国をルーツとする子どもも増えています。文科省によると日本語指導が必要な児童生徒は全国に約3万人で全体の0.2%にすぎませんが、地域的な偏りもあります。そのうえ、子ども自身は日本語が不自由なく使えても両親は全然しゃべれないというケースもあり、家庭の文化的・宗教的背景の多様化はもっと進んでいることは明らかです。また、家庭環境ということで言えば、「子どもの貧困」問題も無視できません。

昔なら個人的な問題だとして見過ごされてきたものも、現在では、個々の特性に応じた指導を行い、一人ひとりの能力を最大限に伸ばすことが求められています。同時に多様な個性を認め合ったうえで、いじめなどを防ぎながら、一つの集団としてクラスをまとめ上げなければなりません。
そのうえ、いま検討されている学習指導要領の改訂では、アクティブ・ラーニング(課題発見・解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習、AL)も課題になっており、多様化した子どもを生かして多様な考えを引き出すことも求められます。ベテラン教員の大量退職が続き、経験年数の浅い先生が増えているなかで、先生に求められている能力ははるかに高度化していると見るべきでしょう。

これまでの加配定数でも、いじめやALなど個々の教育課題に対応してきましたが、本当にそれで十分なのか、抜本的に検討する必要がありそうです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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