自ら学ぶ子になる! 辞書引き学習法【基礎知識編】

小学校に入学すると、子どもたちは本格的に文字を習います。この時期の子どもたちの言葉への関心は非常に高く、この時期に辞書を自ら楽しく使えるようになると、自学自習の力を育むことにつながるそうです。今回は、「辞書引き学習法」を開発・提唱している中部大学准教授・深谷圭助先生に、自学自習力を伸ばすためになぜ辞書引き学習法が有効なのかお伺いしました。

辞書引き学習法で受験につながる語彙(ごい)力を伸ばす!」(動画)



辞書を使って自学自習の力をつける

学びにおいて、自学自習の力はとても大切な力です。自ら主体的に知識や技能を習得していく姿勢は、高校・大学受験だけでなく、社会に出たあとも子どもの財産になります。
この自学自習の力をご家庭で身に付けるために有効なのが、「辞書引き学習法」です。読解力や語彙(ごい)力を高めるための学習法だと思われるかもしれませんが、そうした力だけでなく、学びにおいて土台となる、自分から進んで調べたり学んだりする姿勢を、ご家庭でも身に付けることができます。
やり方はとてもシンプルです。知っている言葉に付せんをつけるだけです。付せんがたくさんつくと、子どもは「自分はこんなにたくさん言葉を知っている」という自信を持つことができます。また、辞書と触れあうことで、自分の知らない言葉や意味にも出会うことができ、「もっと知りたい」という子どもの意欲に火をつけることができるのです。この知らないことを自分で知るという経験は、国語だけでなくすべての教科において自学自習の基本になります。辞書引きをとおして、ぜひこの経験を子どもたちにしてほしいのです。



スタート推奨時期は、小学1年生

辞書引き学習法のスタート時期としておすすめしたいのが、小学1年生です。本来、学習指導要領の規程に則れば、辞書指導は小学3年生からです。しかし、子どもの言葉の吸収力がピークに達するのは小学校低学年の時期。赤ちゃんのころは、耳をとおして言語能力を身に付けていきますが、幼稚園の年長のころから、言語に対する関心は話し言葉から書き言葉へうつっていき、本などからも語彙を習得していきます。私は、学ぶ意欲の高まるこの時期にぜひ辞書を通じて多くの言葉と出会い、自ら学ぶ喜びに気付いてほしいと思います。



用意するものと手順

では実際にご家庭で辞書引き学習法をスタートしてみましょう。


【用意するもの】
・国語辞典(総ふりがな付き、3万語以上の語彙を収録しているもの)
・付せん
(シンプルで文字を書き込みやすい2cm×5cmくらいのもの) 
・鉛筆1本
・消しゴム1個

●辞書引き学習の手順
(1)付せんには、あらかじめ通し番号をふる
(2)辞書をどこからでもよいのでめくって、知っている言葉を見つける
(3)見つけた言葉を鉛筆で付せんに書いて貼る


慣れないうちは1日10枚程度からスタートして、手順を覚えてきたら「1日30分で100枚の付せんを貼る」など、時間と付せんの枚数を決めて行うのがよいでしょう。「100枚も貼るの!」と驚かれるかもしれませんが、小学1年生の語彙力は5,000~6,000語と言われています。3万語収録の辞典でしたら、6つの言葉のうち、1つは知っていることになりますね。1ページに知っている言葉が4~5個は載っているのではないでしょうか。付せんを貼った言葉の意味は、興味があれば目をとおせばよいです。まずは貼るだけでいいのですから、きっとできるはずです。
付せんを貼ることで、自分のがんばりが可視化できるので子どもも自信がつきますし、「もっと付せんを貼りたい」と思うようになるはずです。ポイントは付せんに通し番号をふっておくことです。番号があれば、自分がいくつの言葉を調べたかひと目でわかるので、目標を確認しやすいです。どのページから言葉を探せばよいか迷うようでしたら、「あ行」からスタートするとよいと思います。通し番号を振り忘れたときも、戻ることができます。

次回は辞書引き学習法の注意点や習慣化のコツを深谷先生に伺います。


『7歳から「辞書」を引いて頭をきたえる』『7歳から「辞書」を引いて頭をきたえる』
<すばる舎/深谷圭助(著)/1,575円=税込>
『チャレンジ小学国語辞典 第五版』『チャレンジ小学国語辞典 第五版』
<ベネッセコーポレーション/湊 吉正 (著)/2,300円=税込>

プロフィール


深谷圭助

1989年に着任した小学校で1年生から国語辞典を引かせる「辞書引き学習法」を実践。辞書にふせんを貼って意欲を高めるその教育法は、子どもたちの「本当の学力」を形成するとして教育界で注目を集めている。(株)ベネッセコーポレーション辞典企画アドバイザー。

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